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2014年 09月 28日
感想_下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
c0160283_17362758.gif時代を切り取る必読の一冊でした。内田樹『下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち』読了。90年代以降の学力低下はなぜ起こったのか。そしてニートと呼ばれる若者たちはなぜ生まれたのか。著者が2005年の講演で語った内容をあらためて書籍化した一冊。
『下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち』(内田樹):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部

『オレ様化する子どもたち』の関連図書ということで手に取りました。2005年に語られた内容だけど、古びないどころか、ITが入り込んだ今こそこの本の内容が顕在化しまくっているように感じました。普段感じる世の中に対する違和感やもやもやしたものを、言い当ててくれたように思います。

乱暴ですが、一言で要約すると、世の中のすべて等価交換を原則とするようになってしまったということです。子供達は、学校に行って「あげている」。みずからの時間を投資して授業を受けて「あげている」。だから、それに見合う価値を提供してくれないと納得がいかないのです。それも、今すぐに投資と見合うリターンをよこせというのです。だから授業を聞かない。先生への敬意がなくなる。学ぶ意味を見出せなくなる。学力の低下は必然というわけだ。もちろんここまで単純じゃないし、全体がそうということではないだろうけど、かなり正確に現実をとらえているように思う。

労働にしても同じような現象が起きている。働くかどうかは自分の自由だ。働かなくて何が悪いのか。自分がどこで野垂れ死のうが誰にも迷惑をかけてないじゃないか。一見するとそれは正論にも聞こえるけれど、社会の構成員が労働の義務を放棄してしまったら、この社会という共同体が維持できなくなるのは必然。それを個人の自由という小さなものさしで破壊しようとしているのだという。読んでいて、自分がうっすらと感じていたよりも、はるかに恐ろしいことが起きているような気がしてきました。

そして一番やっかいなのは、かつて常識だったものを、否定することを厭わなくなってきた風潮です。常識や、かつて当たり前だったことが、古くて流行遅れのもののように処理されているような気がします。目上の人を敬うことや、仕事相手に礼節を持って接すること、そういう疑う余地のなかったものが崩れてきています。年上の人にタメ口を使うのもそうですし、敬語が正しく使えないこともそう(人のことは言えないけど)、ルールを守ることがダサイと勘違いしている人が多すぎる気がします。J-POPの歌詞にあるような、自由を求めて、個性を大事に、といった感覚が、間違った方向に濫用されてるって思うことは、もうものすごい勢いであふれかえってますもんね。僕は尾崎豊が書いた「この支配からの卒業」というフレーズが本当に好きではないのです。だって、誰も支配なんかしていないのに、なぜ勝手に支配されたと勘違いしているんだろう?って思うから。学校なんていう最小限の社会でやってけなかったら、いったいどうなるんだろうって思ってました。

何かわからないことがあっても、それが自分の個性だからOK。できないことがあっても、それが自分らしさだからOK。誰かと比べられることを嫌悪し、比べてくるものをナンセンスなものとすればOK。自分を低くしようとするチカラに対しては、すべてそれをなきものにしようとする反作用がとっさに働くんですね。だから、勉強なんてしないし、労働もしない。だってしたくないし、意味ないから。

長くなりますが、とにかくそういう事例を冷静に分析した本です。もう少し私見を述べたいと思います、次のエントリーで。

続・感想_下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち

by april_hoop | 2014-09-28 00:00 | 出版


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