2014年 11月 21日
感想_ソロモンの偽証(負の方程式)
c0160283_15481317.jpg宮部みゆき『ソロモンの偽証』書き下ろし短編「負の方程式」読了。精華学院の中等部で事件が起きた。学校行事である、体験キャンプに参加した子供たちは、教師の火野から生徒たちの人権を無視したようなひどい扱いを受けたという。一方の火野は、そんなことは事実無根だと、双方の出張は真っ向から対立した。いったい嘘をついているのはどちらか。私立探偵の杉村が事件を調査する途中で現れた女性弁護士の藤野もまた、事件を調べていた。
宮部みゆき『ソロモンの偽証』|特設サイト|新潮社

はい、この藤野さんはもちろん涼子たんです。ということで、ソロモンの偽証スピンオフは、あれから20年後の設定。野田は教師になってましたが、涼子たんは、検事でも警察でもなく弁護士になっておりました。そして、神原くんと結婚して子供にも恵まれておりました。これはまたずいぶん読者サービスな設定ですね。彼ら彼女らの青春時代を想像するのもなんだか楽しいです。ちなみに神原くんは研究職についたようで。

事件そのものは、生徒たちがある個人的な思いから火野をハメたというものでした。涼子は、彼らに怒りをおぼえます。なぜ、そんな姑息な方法に頼ったのだと。正々堂々と、証拠を集めて戦うべきだったと。どこまでも正論を貫くところは変わらないなーと思いつつ、やはり普通の中2にはそれはできないよな、と。子供たちがみずからの正義感で行動するくだりも、大人の事情を顧みない子供視点を強調していたように思います。人は、いろいろな背景と顔を持っているということ。今見えている部分がすべてではないこと。基本的には『ソロモン』で語られていたことと同一なのかな。

真実ってひとつじゃない。同じ事象に対しても、真実は人の数だけあるんだよな。思い込み、願望、自意識、他人の目、そう思うと本当に人間て面倒だし、社会ってややこしい。だけど、それがこの世界だし、希望も絶望も普通にいっしょくたになっているんだよな。いいことばかりでも、悪いことばかりでもなくて、それが普通。普通でおもしろい。そんな世界がけっこう好きです。

ということで大長編、これにて完結。宮部さんらしい、重厚なミステリであり、子供たちを温かく見守る青春小説であり、そして真実をめぐるテーマ性もあり、堪能させていただきました。スピンオフの藤野弁護士シリーズ、続いてもいいな〜。

第1部 事件 上巻 第1部 事件 下巻 第2部 決意 上巻 第2部 決意 下巻 第3部 法廷 上巻 第3部 法廷 下巻 書き下ろし『負の方程式』
[PR]

by april_hoop | 2014-11-21 00:00 | 出版


<< 感想_リーガルハイ・スペシャル      感想_ソロモンの偽証(第3部 ... >>