2014年 06月 04日
感想_虚ろな十字架
c0160283_1413179.gif正解は、ない。東野圭吾『虚ろな十字架』読了。中原は11年前、8歳のひとり娘を殺された過去を持っている。それが原因で妻の小夜子とも離婚。そして今度は、その小夜子が殺されたという衝撃の知らせが飛び込んできた。事件は強盗殺人だと伝えられるが、真相はまったく予想しないところにあった。被害者遺族の傷は永遠に癒えることがない中で、刑罰の意味とは、そしてそのあり方とは。東野圭吾最新作。
東野圭吾 虚ろな十字架 特設ページ | フィクション、文芸 | 光文社

東野先生、ちょっと久しぶりにヘビー級の社会派テーマをぶっ込んできました。題材は死刑。愛する娘を突如奪われた中原夫妻の過去を起点に、死刑とはなんなのか、その是非と意味を問いかけてきます。劇中でも触れられてるとおり、この物語に答えはない。いや、答えはあるかもしれないが、状況によって移ろうものであり、ただ一つの正解というのはない、と結論づけている。どのキャラクターの言い分も理解できてしまうんだよな。決して主張が間違っているわけじゃない。だけど、誰もが首を縦にふることができるものでもないから、かなり重いわ。

多分問題の本質は死刑の是非ではなくて、人は更正できるのかと、人は罪を償えるのか、という2点。映画『つぐない』を観て思ったことだけど、償える罪なんてこの世にはなくて、あるとすればそれは赦しだけなんだと思う。花恵はああ言ったけど、それは償いではないと思う。そしてそれは被害者に委ねられなくてはならない。だけど、最愛の人を殺されてなお、他人を赦すことができるのか。おそらく無理だ。あるとしたら赦しじゃなくて諦め。加害者にどれほど情状酌量の余地があったとしても、失われた命は戻らない。それを償うことも赦すこともできないから、死刑はあるんだろう。そう考えると、極刑でありながら、曖昧の象徴なのかもしれないと思う。量刑に正解はなくても、小夜子が殺される理由はなかったよね。

無駄を省いた相変わらずの筆致に、今回も力強くページを繰らされました。設定の細かいところとか、ツッコミどころはあると思うのだけど(町村と花恵があんなにビシっと啖呵切れるわけないとか。史也立派すぎとか。中原、元妻の理不尽な死にもっと怒るべきだろとか。そもそも人間関係をつなぐエピソードはちょっと極端だよね。沙織の父ちゃん不憫)、この話に関してはそれは二の次だろうな。あくまでこのテーマをいかにあぶり出すかって観点でいうと、さすがの腕前でした。だけど、僕が年を取ったのか、物語の都合上けっこうたくさんの死が絡み(地味に田端とか)、誰も幸せになれなかったのはしんどかったかな。

質量のある良作です。エンタメ気分では手に取らないほうがいいでしょう。
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by april_hoop | 2014-06-04 00:00 | 出版 | Trackback(1) | Comments(0)
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Tracked from 笑う社会人の生活 at 2015-12-05 17:52
タイトル : 死刑は無力か・・・
小説「虚ろな十字架」を読みました。 著者は 東野 圭吾 11年前に娘を殺された中原はそのことが原因で妻と離婚し仕事も辞め伯父から引き継いだ会社で働いていた。 そこに娘の事件担当だった刑事が訪ねてくる 中原の元妻の小夜子が何者かに刺殺されたという。中原は、...... more


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