2013年 11月 11日
感想_昼田とハッコウ
c0160283_22361211.gif本屋さんが、好きです。山崎ナオコーラ『昼田とハッコウ』読了。幸福寺という街で、アロワナ書店を営む田中家。次男のハッコウは引きこもり、小さい頃に田中家に引き取られて以来ハッコウらと兄弟同然に育てられた昼田は六本木ヒルズのIT社長として働く。彼らの父である公平が亡くなり、ハッコウがオーナーとして、昼田は店長としてアロワナ書店として働くことに。昼田は今まで知らなかった書店店長という仕事を通して、自分のこと、家族のこと、仕事のことを見つめ直す。
講談社BOOK倶楽部:昼田とハッコウ 山崎ナオコーラ

山崎ナオコーラは中編作家のイメージだったけど、これはそれなりにボリュームある長編。書店を舞台に、その周辺人物の日常を描いています。だけど、ナオコーラらしさは健在で、とんでもないドラマが起こるわけでも、書店再生を劇的に描くこともしない。ただ、書店と、そこにある空気や、人々の普通の気持ちを一つずつ捕まえながら描いていく感じ。読んだ後、あれ、何があったんだっけ?って思ったり、しばらくしたら、あらすじもほとんど出てこないかもしれない。そういうテイスト。でもそれで良いと思うし、それが良いのかもしれない。

本の流通の仕組みは、なんとなくは知っているけれど、書店の裏側についてまではほとんど知らないので、そういう点でも楽しめた。書店で働く人の空気感とか(いちがいにアロワナ書店がすべてじゃないだろうけど)、早番遅番がどんなふうとか、POPを誰がどう作り、フェアはどう企画されているのかなどなど。営業さんとのコミュニケーションに、昨今増えつつあるイベントのこととかもね。『船を編む』はそういう普通の空気感が希薄だったので、どちらも出版業界のワンシーンではあるけど、本作の方がなじみが良かったなぁ。もっと仔細に書いてくれてもいいくらいだったけど、さすがに物語がぶっ飛び過ぎちゃうのかね。

ちなみに舞台となっている幸福寺は何から何まで吉祥寺のことで、それはすぐわかるように書かれている。井の頭公園らしきものもあるし、登場する舞台はおそらくすべて実在してるんでしょう。というかアロワナ書店自体も、ブックスルーエのことなんじゃないかな、って思います。そうそう、井の頭公園を出自に持つイラストレーターのキンシオタニさんの得意技もしれっと登場していたっけ。吉祥寺好きさんにはニヤリがいろいろあるんじゃないでしょうか。

今、書店、特に街の書店は難しい局面に立たされていて、だからこそ著者は書店を舞台にしたみたいだけど、書店がなくなることはありえないとは思う。たくさん淘汰されてしまうこともあるでしょうし、地方になればなるほどより難しいのかもしれない。だけどやっぱり僕は本屋さんて好きなんだよなー。決まった本を買うならAmazonでいい。でも決まってない本を、というか全然知らない本を見つけられる本屋さんてのはやっぱり居心地いいですよね。そんなことを改めて思う本屋さんでした。本好きには、それなりに支持されそうな本だと思うわ。本屋大賞とかになったらなんかそれはそれでイヤだけど。笑
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by april_hoop | 2013-11-11 00:00 | 出版 | Trackback | Comments(0)
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