2013年 09月 18日
感想_祈りの幕が下りる時
c0160283_2341899.gifサスガとワンパの間。東野圭吾『祈りの幕が下りる時』読了。新小岩のアパートで女性の腐乱死体が見つかった。絞殺されたと見られる30代後半のその女性は、殺される前日に中学の同級生である女性舞台演出家・浅居博美を訪ねていた。浅居は、日本橋署の刑事・加賀と思わぬつながりのある女性だった。果たして彼女は事件に関係しているのか。さらに、すぐ近くで起きていた河川敷での事件との関連性はあるのか。意外な真相は、加賀の母親ともつながっていた。
講談社BOOK倶楽部:東野圭吾『祈りの幕が下りる時』

書き下ろしの加賀シリーズ最新作をゲットして即読了。いつも通りの安定感でした。さくさくと読み進められる文体、視点を変えながらいくつもの手がかりを少しずつ提示し、全体感を見せたうえでそれを後半で一気に回収。自然とスピードアップしてクライマックスを迎えます。誰にでもできることじゃないのは明らかなのに、それを毎回ちゃんと実践できているのは毎度のことながらサスガ。けっこうな枚数だったけどサクリと読み切ってしまったよ今回も。

でも、目新しさがあったかというとそうでもなかったなという感想。今作でついに加賀の母親がなぜ家を出ていったのかが明らかにはなった。加賀と金森さんの関係にも微妙な進展があった。シリーズものとしてキャラクターが若干の前進をしているのは嬉しいけど、単体としてみたときに主テーマである親子の関係への踏み込みは浅かったと思う。親が子を思う強烈なまでの執念が今回の事件の背景にあり、そこに加賀の事情を重ねたのは巧いけど、もう少し事件以外の部分でそこへの言及があってもよかったように思う。まあ謎を伏せて置かないとミステリとして楽しめないからあんまり背景を厚くできないというのはわからにでもないけど、うーん、半分で事件は終わらせて、残り半分は親子というミステリにもっと深く掘り下げていってほしかったな〜というのが一読者の勝手な希望です。

そして、事件に使われてたトリックというか手法が、なりすまし、すりかえ、ホームレス、など過去作品にも登場しているメソッドが続いたのはちょっと気になったかな。最後のキモはあまりにも悲劇的すぎてツラかったです。それほどの極限状態とはいえ、やはり最後は手を下せないのじゃないかと僕なんかは思うけれど、それこそが深い愛情の裏返しといわれたら返す言葉はないか。もうひとつ、厚子や苗村は扱いがちょっとかわいそうでしたね。そして、さりげなく原発へのメッセージをチクリとやっていましたね。序盤で震災をまたいでいたので、そこがモチーフになってくるかと思ったけどそっちではなかったわ。加賀シリーズでそこに触れる必要はないのかもしれない。

エンターテインメントとしてはレベル高いけど、東野圭吾にはもっと上を求めてます。人間の尊厳についてとか、そんなことを突き刺さって痛いほどに描いてほしい。描ける人なのだから!
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by april_hoop | 2013-09-18 00:00 | 出版


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