2013年 08月 01日
感想_憤死
c0160283_17251221.gifりさりさネガ、発動! 綿矢りさ『憤死』読了。表題作を含んだ3本の短編と、掌編ひとつからなる一冊。どれも著者らしいネガティブな人間心理を意地悪に、おかしみをもって描き出しております。
憤死 :綿矢 りさ|河出書房新社

最初の『おとな』からしてこれをどう捉えて良いかわかんないんだけど、実体験てことはないですよね? あるんですかね? その経験が後に続く3作品のインスピレーションだったりするんでしょうか。とか、いろいろ深読みできちゃいますが、ただの呼び水であってほしいなぁと思います。

『トイレの懺悔室』。「懺悔」という行為の罪深さと不可思議さを、田舎文化と少年たちの残酷さとあわせてごちゃ混ぜにした物語。後味は悪め。特に罪のなかったおじさんを、いつのまにか支配する少年。こういう宗教観を逆手に取る作品って過去にもありそうだけど、日本の田舎が舞台だとまた違った趣が。狭いコミュニティだからこそ、人々の距離が近く、実際的な支配が利きやすい。そしてその力関係を逆転させるのが「告白」という面白さ。人間の弱さと、奥底にある残虐性があわさってて夏の怪談仕立て。少年にもまたなにか違った事情があったに違いない。

『憤死』。もっとも綿矢りさらしいというか、これまでの作品の系譜とつながる一作。すなわち学生時代の友人関係に見る人間性の機微を滑稽なまでに強調して抜き出してます。ここでは佳穂の持つ怒りのパワーにスポットをあてて「憤死」できるほどの怒りって面白いよね、と引いた目でリスペクト込めながら笑ってます。ここまで怒れる人間というのは、確かに僕も尊敬するところがあるので共感はあるけれど、登場人物2人が愛せないので、ちょっと嫌ーな感じのテンションがあることは否めないか。

『人生ゲーム』。これは新境地というのか、意外にもスケールの大きなお話。子供の頃からの仲良し3人組がたどった数奇な運命を、人生ゲームになぞらえつつ、俯瞰する物語。なにかミステリー的なオチがつくのかと思いきや、最後にはなんだかとても温かいゴールで終わっていてよかったわ。人生は、ともに歩く人、そしてそれを話して聞かせる誰かがいるからこそ価値があり、面白いもの。話を聞いてくれる誰かが、話をしてくれる誰かがいなければ、その人生には価値がないのかもしれない。旅は道連れ世は情け、っていうほど簡単なことじゃないかもしれないけど、対話って本当に大事なんだなぁとしみじみ感じ入ってしまいましたわ。

どれもサラっと読めるボリュームとテンポ。しかし、綿矢りさの向かう先はどこなんだろう、なんて改めて思ったりもしたしだい。お次は新刊ね。
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by april_hoop | 2013-08-01 00:00 | 出版 | Trackback(1) | Comments(0)
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Tracked from 笑う社会人の生活 at 2015-11-12 16:54
タイトル : 綿矢さんの短編を
小説「憤死」を読みました。 著者は 綿矢 りさ 今まで読んだ作品、ヒットの綿矢作品 今作は4つの短編ということで 完全に独立した作品で 「おとな」「トイレの懺悔室」「憤死」「人生ゲーム」 今作も差はあるが、どれも楽しめたかな 短編ということで、ちと物足りな...... more


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