2012年 10月 14日
本と紙と、物語と_31、雑誌再起動について
c0160283_8451564.gif仲俣暁生『再起動(リブート)せよと雑誌はいう』読了。去年出て出版界でちょっと話題になった本、ようやく読みました。出版不況と呼ばれるようになって久しい今、マイナス成長スパイラルから抜け出せないのが雑誌。その雑誌の現在地点を探るべく、筆者がさまざまなジャンルの雑誌を読みあさり、それぞれを考察した本。もとは2009〜2011年に「Meats regional」で連載していたものをまとめたものだそう。
株式会社 京阪神エルマガジン社|書籍のご案内「再起動せよと雑誌はいう」

とにかくたくさんの雑誌が取り上げられていて、筆者曰く昔から好きだったもの、久しくご無沙汰だったもの、売れてるというだけで格好悪いと思われてるもの、初めて読むもの、さまざま手に取ったそう。「BRUTUS」や「Pen」などのいわゆるライフスタイル誌、「真夜中」「ユリイカ」などの文芸誌、「文春」「AERA」などの週刊誌系、「Number」「Rockin' on」などのカルチャー誌、「ランドネ」「Sweet」「Mart 」などの女性誌、といった具合に(女性誌がちょっと少なくないか?と思うけどまあいいか)。それぞれの変遷や直近の動向に対して、見解が述べられている。メインで取り上げられている雑誌に付随して、類似誌との比較とか過去あった雑誌を引き合いにしたりしていて、筆者の主観ベースとはいえいろんな見方ができて面白いわ。扱ってる特集が去年夏〜秋くらいのものなので、なるべく早く読んだ方がいいと思う。

そう、つまりこの本ももはや雑誌的なものなのだ。雑誌って基本的には時代とともに読み捨てられていくものだから、1年後には古くなってしまうことがほとんど。ファッション誌は、ビジュアルの参考にはなるけれど洋服の情報としては使えないし、情報誌だったら飲食店は閉店とか移転してるかもしれないし、ものの値段も変わっていくし。週刊誌もそうだよね。ああ、あの頃はああだったよね、という懐古的には楽しめるのかもしれないけれど。最新情報もそうだけど、過去っていう膨大なアーカイブに関してもインターネットの方がはるかに得意分野だからなー。難しいわけだ、雑誌が。筆者の結論は、雑誌はどうこうしていくべきだという類いのものではなくて、まだまだ面白い雑誌はあるし、やりようもある、という結論。

情報でお金を取れないとなるとなにで売るかって話ですよね。みんながみんな同じ雑誌を読むことはなくなって、自分に合う雑誌と親密なコミュニケーションを取り始めている。そこにあるのは媒体という人格(ブランド)への信頼なんだろう。この人が言うことは信用できるし、自分と近しいものを感じる。だからお金を出してその世界に触れようとしてくれる。そんな人格と文脈作りが雑誌の生きる道なんだろうなーと思う。ブルータスが今後どうなるかはわからないし、それほど多くの部数を売っているわけではないようだけど、やっぱり一定の文脈をもって作られているから手に取ってしまうものな。「暮らしの手帖」とかが広告無しで安定して作られ続けているのは、読者と編集部の間でいいコミュニケーションが取れているからなんだろう。

人格を固めることで、広くたくさんに受け入れられるということができにくくなる。そうするとまた商売としては難しくなってしまう。その鬩ぎあいが、まだしばらくは続くのだろう。読ませることができて、情報以上の情緒的価値を与えることができて、それでいて親密さを感じさせるもの。みんなに好かれようとすると薄くなる。かといって狭めると首が回らなくなる。だから今、リトルプレス系がとにかく隆盛で、Blogよろしく小さなコミュニティが小さな枠組みの中での実験的発信を繰り広げている。でもなぁ! ファンのためにしかない雑誌なんてどんどん閉鎖的になってしまいそうだぜ。一般流通に載せる以上は勝負してかないとだめだよなー。たとえ一年後に時代の中に埋もれてしまってもな!

ということで、どこにも辿り着けないひとりブレストはまだ続く。雑誌の未来はどこ?
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by april_hoop | 2012-10-14 00:00 | 閑話 | Trackback | Comments(0)
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