2012年 06月 02日
第6〜8講ではいよいよ我が出版の話題です。電子書籍の話から著作権への考えを通し、読書という行為の意味とこれからを語っておられます。 街場のメディア論 内田樹 | 光文社新書 | 光文社 ビジネスモデルとか、取次&返品システムの問題点とか、細かく見て行くといろいろありますが、結局最終的に言いたいのは、出版の本質とはなんなのか、につきるんでしょう。内田さんは、言いたいこと伝えたいことがあるから書いている。それがどう読まれようが構わないし、どんどん複製でもなんでもして少しでも多くの人に広まってくれたらこれに越したことはない、とおっしゃります。著作権を守ろうとする立場の人とは真逆ですね。この発想は、書物そのものに価値はない、というところから来ています。書物に価値があるのではなく、その中身に対して読み手が意味を見出せたときに初めてその書物に価値が出るのだと。 目からウロコでしたよ。そうだよね、そういうことだよね。やっぱり僕も根本的には、言いたいことがあるから書いている、というのがとにかく大きいです。このblogがまさにそうで、この記事でお金をもらえるなんて思わないし(もらえたら嬉しいけど)、そういうモチベーションでやっていることではありません。でももしかしたら、ここにのってたこの情報が役に立ったよありがとう、なんて言ってもらえることはあるかもしれません。内田さんは「贈与と返礼」という言葉を使ってこの事象を語っておられます。誰かから無償で贈り物を受けたとき、それがなにか有効そうに思えたら、人は何かしらの返礼をしなくては、と思うものだそうです。この原理が段々と経済活動になり発展して今があるんでしょうけれど、真に大切なのは、そもそものこの本質的原理にあるんでしょう。 メディア論と結びつけるのならば、やっぱりことは単純で、真に有用な情報を発信できているのかどうか。新聞もテレビも出版も、これに尽きるということだと思います。それがお礼をするに値するものならば、対価という形で視聴者、読者は答えてくれるはず。その本質を見誤ったまま、経済優先で肥大化した結果が今です。内田さんは、メディアの危機を語る論調には、読者や視聴者への敬意が抜け落ちている、ということを指摘しています。確かに、受け手の質が落ちたとか、リーマンショックとか、外的要因ばかりをねつ造しようとやっきになるあまり、自分たちの中身への厳しい目というのが足りなかったというのが本当のところなのかも。 出版にしても、数は減っているとはいえまったく本が売れていないわけじゃない。今まで通りにはいかないとしても、意味のある本はちゃんと受け入れられているし、少なくとも僕は本がまだまだ好きだし買っているわけだし、そういう読者ときちんと向き合って行くことこそが、求められていること。紙か電子か、という問題じゃあ全然ないんだよね。 とまあ、思ったより長くなったうえに、ちょっとひとりよがりな文章になってしまいました。十分に考えをまとめないまま書き殴ってしまったので、非常に読みづらかったのではないかと思います。偉そうなことを言っておきながらすみません。少し時間を置いてリライトするかもしれません。何にしても、この本自体は目を通す価値のある1冊だと思うので、ぜひ手に取ってみてください。このシリーズはほかに「アメリカ論」「中国論」「教育論」などもあるようなので、ちょっと探してみたいと思います。ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
by april_hoop
| 2012-06-02 00:00
| 閑話
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