2012年 05月 30日
本と紙と、物語と_27(街場のメディア論より1)
c0160283_10365859.gif内田樹さんの『街場のメディア論』という新書を読了。2010年8月に出た本だけど、いくつか思うところあったのでバラバラと書き連ねてみたいと思います。内田さんの本、初めて読んだけど的確で共感できることも多く楽しかったです。
街場のメディア論 内田樹 | 光文社新書 | 光文社

まずは第一講の「キャリアは他人のためのもの」。キャリア教育を語るにあたって、働くことと、仕事における適性についてのお話。内田さんは、適性というものは後からついてくるもので、天職がある、という考え方そのものが幻想だ、とおっしゃってます。仕事ってのは他人から必要とされて請われて初めて生まれるもので、自分からあれが向いてるだのこれができるだの言うものではないし、能力というのは自分のための開発よりも、誰かのために開発したほうが発揮されるものだ、という感じの内容。

いやほんと、これは100%同意します。何でもそうだけど、適性があるかどうかなんて仕事をする前にわかるはずもないし、働いてからも1年や2年ではわからないことのほうが多いように思う。目の前の仕事を「向いてない」なんていって投げ出していては、他の仕事についても結局似たようなことになるんじゃないかな、というのが基本的に思うこと。仕事ってのはおよそ面倒なこと、やってられないことばかりで、さらにわけのわからない頭のおかしい人たちに囲まれてやるもんであって、そういうネガティブな側面がひとつもないところなんてあるんだろうか?という感じ。仮に自分が天職だと感じる場所にいたとしても、そういうネガ要素はついてまわるはず。そもそも人間が100%満足できて不快なことを1mmも感じないような環境なんてないでしょ、きっと。

能力は他人から必要とされて開発される、というのはこの本で初めて思い当たった価値観で、非常に腑に落ちた。自分のための努力というのは、やはりどこかで甘えや妥協が出やすいもの。判断基準が自分しかないというのはそういうことだ。自分がまあこのへんでいいやと思えばそこで止まってしまう。それに対して他人の目が入ったらどうか。自分はここらでそろそろと思っても、他人がノーというのならばやるしかなくなる。いや他人の目があると思うだけでがんばらなくてはいけないというモチベーションは働いてきたはず。結果、自分では思わぬところまで引き上げられる、ということは往々にしてあったように思う。役職が人を育てるとか、後輩ができて変わるとか、類似した事例はいくらでもあるよね。

適性とか天職という考え方そのものを否定する気はないけれど、こういう言葉は甘えや言い訳になりがちである、ということは憶えておいたほうがいいのかもしれない。キャリア教育ってものの考え方が根本的に間違っていると内田さんは言っていて、確かに仕事をしたことがない学生がキャリアを考えるってのもなんだかおかしな話ではあるよね。何事もやってみなければわからない、自分にそれが向いているかどうかなんてなおさらだと思う。好きなことは仕事にしないほうがいい、なんてこともまことしやかに言われるけれど、本当に好きならとことん仕事として付き合っても良いと思う。要するに好きなことに対する覚悟の問題だよね、それは。

話は変わるけど僕はもともと人見知りで、今でも初対面が得意というわけではないけれど、雑誌屋という仕事して、うなるほど初対面の人と会って話をしなくてはならないというポジションを与えられてみたら、ずいぶんと人見知りを改善できたと思うわ。これ、やる前に自分には向いていないなんて尻込みしていたら、まったく開発されずに来てしまったかもしれない。働くって、だいたいそういうことだよね、と僕も思います。リスクヘッジしすぎると、大事なリターンも逃す可能性が生まれるって、当たり前のことですよね。

ってこれのどこがメディア論なの?って感じですが、序章ということで。この本は、神戸で学生相手の講義内容を書き起して加筆修正して本にしているそうです。なので基本的に学生に向けて語られたないようなので。前提として、キャリア教育プログラムというものの中の「メディアと知」という講義だそうで、メディア志望の学生に向けてお話しているそうですよ。
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by april_hoop | 2012-05-30 00:00 | 閑話 | Trackback | Comments(0)
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