2012年 05月 13日
本と紙と、物語と_26
c0160283_11252011.gif自由が丘に、ミシマ社という出版社があります。その社長の三島邦弘さんが、ミシマ社をどんな思いで立ち上げて、どんな経緯で設立から5年あまりがたったかを綴ったのが『計画と無計画のあいだ』。ノンフィクション的にも楽しめるし、本作りに携わる人間として感じるところの多い本でした。
河出書房新社|計画と無計画のあいだ
株式会社ミシマ社 原点回帰の出版社、おもしろ、楽しく!

広く言われている通り、出版業界の不況は長く続いております。特殊な業界ゆえの閉塞感があり、構造的問題を解決できていない部分が多い業種です。三島さんは、出版社で働くことで、そういうジレンマを体感しておられたようです。そして、ある日突然旅に出て、そして帰国後再就職したのちに思い立ちます。「出版社を作ろう」と。彼が考えたのは、「原点回帰の出版社」。その思想は実にシンプルです。"面白い本を作って、それを読者に届けよう"と。そんな簡単なことが、やりにくくなっているんですね、出版社というのは。特に大きくなればなるほどに。彼の作ったミシマ社は、時代の先を言ったように思います。資本主義から離れた、経済とは違った観点が重要視されるその姿勢は、モノヅクリの原点そのもの。アウトプットこそ「本」という形状ですけど、そこにある精神性はアーティストや作家、職人のそれと同種なように思いました。僕は、ブックマーケットでお姿を拝見したことがあるだけですけど、なるほどアツイ人なんだな、と思ったことを覚えています。

この本はもちろん小さな出版社に関しての本で、どんな風に本作りをしているかが語られているけれど、あらゆる職業人が立ち返るべき原点があるように思いました。どんな仕事にも、大なり小なり問題はあると思います。その問題に対して、自分はどう処するべきなのか。もしも今、そういう悩みを抱えている人がいるならば、この本はもしかしたら問題解決の糸口になるかもしれません。三島さんの考えは、すこぶる正論です。自分が楽しまなくちゃいけない。自分が楽しめればそれはお客さんにもきっと届くはず。自分とお客さんの間に介在するものはなるべく少なくして、直接自分の言葉が届くようにする。

あまりにも当たり前の正論すぎて、抵抗感を持つ人も多いかもしれません。だけど、そんな当たり前が当たり前にまかり通らないというのは、やっぱり少しおかしいと思うのです。それに自分を長く押さえつけていると、だんだんクサクサしてきちゃいますしね。やっぱり、本質というのはとてもシンプルで、自分が自分らしくあれることが、なによりも優先されるべきだと思うんです。いろんな面倒くさいこととか、ややこしいしがらみが多いからこそ、迷ったときには原点回帰です。自分の心が本当に何を望んでいるのかに耳を澄ますことが大事なんだと思います。

三島さんの思いに触れて、自分も改めて本作りに向き合う姿勢というものを考えさせられました。利益を出すこと、コストをおさえること、素敵なものを作ること、どれも大切だけれど、本当にいちばん大事なことは、「読んでくれる人にとってよいものであれること」でした(この拙blogもですね)。口にするのは簡単で、実行するのは難しいですけれど、でもこのことは忘れずにいたいな、と思いました。繰り返しになりますが、出版人の本ですがそれ以外の働く人に広く受け入れられる内容だと思いますので、よかったら手にとってみてください。
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by april_hoop | 2012-05-13 00:00 | 閑話 | Trackback | Comments(0)
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