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2011年 12月 06日
感想_神様2011
感想_神様2011_c0160283_2341855.gifそれが、日常。川上弘美『神様2011』読了。
神様2011 川上弘美 講談社

まったく予期していなかった出会いだ。たまたま入ったカフェに置かれていた本。タイトルに興味を惹かれ手に取り、ごく少ないボリュームにこれはすぐ読めていいやという軽い気持ちでコーヒー片手に読もうとすると、なにやら帯に著者コメントで"原発うんぬん"の文字。ん? 発売されたのは9月。ん?? いよいよ手放すこともできずにページを繰る。あらすじは不要でしょう。驚くべき、そして静かに心を刺激する内容でした。これは立ち読みでも読み切れる程度の枚数なので、ぜひ一度開いてみてほしいな。

3.11を境にして変わってしまったものはたくさんあるだろう。そしてそれは終わりではなくずっと続いていくなにかなんだろう。しかしもうそれは、日常なんだね。ひっくりかえったお盆は元に戻らず、文字通りあふれた水は地面の中にしみ込んだ。もう、ひっくり返る前は過去でしかなくて、ひっくり返った後の今が日常になった。震災に限らず、なにもかも、それが世界のあり方なんだろう。良いも悪いもなく、ただそれだけのこと。時間は前にしか進まない。

その普遍を、こういう形で、自らの意志を表明しながら本にした川上さん、凄いと思います。自分にできること、というどこか浮ついた入れこみとは違う地に足の着いた表現だと思いました。僕自身、もちろん3.11を忘れたわけではないけれどかなり遠ざかり、薄れてきてしまっている。あんなに「なにかしなくちゃ」とムキになっていたのに、東北へももう足を運べていなくて。もう一度、何かできることを探したいと、思った。

by april_hoop | 2011-12-06 00:00 | 出版


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