2011年 08月 31日
京都といえば豆腐、という人がどれだけいるかわかんないけど、わりと象徴的な食べ物のひとつであることは間違いないみたい。湯豆腐とか湯葉とか、確かに京都と豆腐の結びつきは強くて、その理由のひとつには水がいいこともあるようで。だいぶ減ったとはいえ、街の豆腐屋さんがちらほら見かけられるのはなんとなく嬉しい。そして油小路と椹木町通りの角にある入山豆腐店さんは、未だにおくどさん(竃のこと)で大豆を炊き続ける老舗。創業からは200年近いそう。 夜が明ける前から黙々と家族で豆腐を作り続ける。その様子を見せてもらったわけだけど、プロだったなぁ! 大豆をすりつぶすのこそ機械だけど、それを炊いて、かき混ぜて、焦げ付く瞬間を見計らいながらすましこを入れ、漉して、成形して。手間ひまかけたその一連のプロセス、今じゃ機械化しているところがほとんどで、そうすれば安定して失敗のない豆腐が作れるんだそう。でも、たとえば炊くにしても、機械は"絶対焦げない"を前提に調整されているんだけど、確かにそれは間違いがないけど、ほんの少し焦げるくらいのほうがいい塩梅の風味が加わるんだそうだ。大豆の甘みの中にほんのり焦げが薫ることで、よりいっそう豆腐の甘さが増すという。そのさじ加減は人の手じゃないとできないってさ。 1つひとつの工程を、抜かりなく揺らぐことなくこなしていく手は、まさしく職人の手。人間の手ってすごいんだな。二足歩行が両手を自由にし、その両手はさまざまなモノを生み出し、そして発展させてきた。複雑な操作も、繊細な加減も、両の手が支えてきたんだよなぁ!とずいぶん大げさな、今まで考えたこともないことに想いが巡ってしまったぜ。そのくらい凄かったわ。焼き豆腐を炭火で焼くおばあちゃんの姿にも、えも言われぬ感動がありましたとも。これこそが文化ってやつか。 小学校の社会科見学で近所の子供たちが店を訪れることもあるそう。豆腐が大豆からできるものだと聞いても、子供たちにはその過程がイメージできない。機械にポンと入れたら豆腐になるんだよ、じゃ納得なんてできない(納得できたとしても、実はなんにもわかってないことになるんだろう)。でも、手作りならば1つひとつをちゃんと目で追って理解できるんだそう。それは、どんなものにも成り立ちがあり、そしてそれは人の手が作っているということを感じ取れるんじゃなかろうか。広くもの作りの原点とも言える、目に見える手だったな。 ちなみに、京都だと絹ごしは、夏の間の食べ物なんだそう。あとは木綿を年中やって、冬場は焼き豆腐にするんだそうだ。すげー美味しかった。『マザーウォーター』かと思った。近所の人が次々と買い物に訪れ、1つ、2つと売られて行く豆腐。毎日毎日世明け前から作られる豆腐。ものすごくシンプルで、大事な日本人の原点を感じる味だったな。
by april_hoop
| 2011-08-31 00:00
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