2011年 07月 13日
本と紙と、物語と_19
c0160283_9173539.jpgここ2〜3年、アートと呼ばれるものへの興味が増幅中。去年は瀬戸内国際芸術祭、一昨年は大地の芸術祭にも遊びに行ったし、それ以外でも都内の美術館やギャラリーにちょろちょろ顔を出したり。これ、ボク個人のブームではなくて社会全体にアートが入り込み始めてるなーと思うのだけど、そんなときに吉祥寺の百年て本屋で見かけたこの本。『これからのアートマネジメント』を読了したのです。
これからのアートマネジメント〝ソーシャル・シェア〟への道 (FILM ART | フィルムアート社)

いろんなアートスポットやプロジェクトが誕生している昨今、その裏にはマネジメントに携わる人がいて、いろんな現場で実際にアートマネジメントしている人たちが、項目ごとに個人的経験をまとめてたり、Q&Aで回答していたり。ひとつの答えを導くというよりはケーススタディから全体像を感じる、という内容で、現代性があって楽しく読めたわ。本ができたのは今年の4月なのでまだまだ新鮮。

ひとことで言うと、結局はアートにも編集が必要ってことなんだろうな。アーティストが作品を造るだけでは、ごく限られた範囲でしか人目に触れさせられない。アートをいくつも束ねたり、場所を作ったり、広報したり、組み合わせたり、そんな色々な作業やプロセスを経てはじめてアートが広く伝播していく。つまりは個でしかないアート作品の力や可能性を増幅させるための編集をする人間がいる必要があるってことだ。こういうのはなにもアートに限ったことではないし、と同時にアート特有の課題もたくさんあるってこと。

昨今のアート流行りは(あえて流行りと言い切ろう)、アートを手段・媒介とすることが多い。町おこしだったり、デモンストレーションだったり、福祉だったり、いろんなケースが考えられる。なんでこんなにアートがもてはやされるのか。それは、合理化効率化を重んじた社会は、いろいろなものを硬直化させてしまっているから。スピードやスペックを求めるとどうしても切り捨てられるものが多いし、最短距離というのはどんな状況においても原則的にひとつしかない。でも僕らが生きる世界は、ただひとつの正解だけでできているわけではなくて、それどころかほとんど全部といっていい不正解で成り立っている。その無数の不正解たちに光を当てるきっかけになるのがアート。

こと現代アートにおいては、アーティストたちの問題意識だったり、社会への問いかけがアートという形になって立ち上がる。それは、思いも寄らない形をしていたりして、鑑賞者にいろんな可能性を与えてくれる。正解以外の答えへのアクセス権みたいなものを、分け隔てなく均等に。その体験は、オンラインの世界ではなかなか実感しにくいし、方程式にすることもきっとできないんだよなー。観る人によって答えがまったく違うからこそ、可能性がどんどん広がるし、その自由さこそが硬直化に対抗しうるチカラとなるのだから。

アートによる偶発性を導くための場やシステム、ルートを作る、っていうのもなんとなく矛盾感をはらんでいるけど、でも編集者として感じることの多い本でした。それだけじゃなくひとりの人間として生きるヒントになりそうな言葉も散見されるなかなかの好書だったわ。アートの世界にも、物語つーのはあるんだな。
[PR]

by april_hoop | 2011-07-13 00:00 | 閑話 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : https://aprilhoop.exblog.jp/tb/16596502
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。


<< キャリアやらマネジメントやら      女々しいのも人間か >>