2011年 01月 13日
感想_白いしるし
c0160283_9384337.jpgものづくりすとの恋。西加奈子『白いしるし』読了。飲み屋でバイトしながら絵を描いている夏目。いつのまにか32歳になったが、周りにも似たような人が多いので安心している。心を許せるのはカメラマンの友人・瀬田くらいだ。その瀬田に誘われた絵の個展で、夏目は出会う。間島という男が描く、真っ白な絵は彼女の心を奥底からさらってしまう。
西加奈子『白いしるし』|新潮社

西さんの作品はかなり久しぶり。初期2作読んでいまいち馴染まないなぁという印象だったのでスルーしてたの。今回も特別その印象は変わらなかったかな。文体やディテールが好みと違うから、テンポが悪いわけじゃないのに、ちょいちょい「ん?」と引っかかってしまう。非圧雪で上フカフカと見せかけてその中はアイスバーンなゲレンデみたい(長くわかりづらい喩えですまそ)。ときとき小さいコブやブッシュが気になっちゃう。

恋の話。失恋の話。骨格はわりとシンプルで、好きにならないほうがいい人を好きになるというのが中心。出会い、惹かれ、結ばれるけど、離れる。そして、夏目は成長する。ただし中身はけっこう強烈。夏目は一人称のために普通っぽく描かれるけど、一般的に言ってみればかわりもん。生活そのものも頼りないし、恋の仕方も、堕ち方も、常軌を逸しているので、読者も簡単にはシンクロできないと思う。共通点を探すとしたら、やっぱエモーショナルな部分での恋愛の仕方なのかな。いてもたってもいられない。くっついたら離れられない。

出てくるのは画家とカメラマンとギャラリーオーナー。つまりモノ作りする人たち。物語は終盤に思わぬ展開をして、モノ作りと恋愛という似て非なるけど相似する2つが並行に語られてくのが面白かったな。人が好きだからその人の作品が好きなのか、その逆なのか、果たして人やモノの本質を見て好きになるのかそれとも別のバイアスがかかっているのか。小説の中ではそれを「エゴ」という言葉で表現しているけど、ボクはエゴイストじゃないと信用できないと思ったりするから、そこんところは共感というか肌感覚で言いたいことなんかわかるなーと思ったわ。

という感じで、恋愛の話でありながら意外な転調をするので、ややまとまりには欠ける気もするんだけど、最終的にこれは夏目の成長物語として読むべきなんだろうな、と。失恋した過去も痛みも消えないから、それをまたひとつ抱えることで次の自分になれる。言葉を持ってなかった夏目も、ギャラリーの主人とぶつかることであれだけ吐き出せるようになったんだし、きっと描く絵にも多少の変化があるのかもしれない(もちろんないのかもしれない)。

間島も瀬田も一般的に言ってかなりエキセントリックにつき、簡単には愛せませんわ。ゆえに万人受けしそうにないけど、根っこのところはわからんでもないって感じ。ダメンズ好きならどこか共感できるかも?
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by april_hoop | 2011-01-13 00:00 | 出版 | Trackback | Comments(0)
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