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2005年 10月 02日
感想_卒業 〜雪月花殺人ゲーム〜
感想_卒業 〜雪月花殺人ゲーム〜_c0160283_0363012.jpg人生最長の待ちぼうけタイムに一気に読破。東野圭吾の2作目『卒業』読了。

デビュー作の『放課後』より格段に良くなった印象だなー。登場人物のキャラがかなりしっかり作り込まれてて(若干極端な面もあるけど)、物語に入りこみやすい。本格密室ミステリーなわけだけど、トリックそのももさることながら、事件の背景の描き方が著者らしい。で、"東野圭吾を読むと軽く鬱になる"ってのが納得できる作品。

舞台は大学。主要登場人物は4年生7人。その中の1人の突然の死によって物語は動き始める。自殺なのか他殺なのか、事件はなぜ起こったのか。前半は細かな布石こそ目に付くものの、具体的なものはいまいち浮かび上がらないまま進み、後半一気にすべてが明らかになりはじめる。

この作品、単なるミステリーではなく、青春的要素が詰まってて、なかでも導入部分はけっこう好き。リアリズムだけじゃない、作者のロマンチシズムみたいなんが感じられるんだけど、どうなんだろ(『パラレルワールド』の出会いのシーンとかもえらくロマンチックだし)。あと、最初から主人公を打ち出し過ぎないところも巧いなー。沙都子よりの視点から入っていたのが、いつの間にか加賀側の視点に切り替わってる。これによって登場人物の関係性に3D感出ていいね。ラストの終わり方も好みでした。雅子先生の設定は反則のような気もするけど、不自然さはないかも。

さてさて、結局のところ"軽く鬱入るような"痛々しい結末が用意されてるわけですが。友情という看板に隠されてたそれぞれの秘密、すれ違い。友達だからって、すべてを知りうるわけでもなく、だからって何にも知らないわけでもなく。そしてそれに気付いて、受け入れて。そんな"卒業"のシニカルな面が、決して的外れじゃないからやり切れない。20年近く前の作品にして、現代に通じる人間関係の危うさを見事に切り取ってることにけっこうビビったなぁ。

ひとつのエピソードに、ひとつの回答を当てがうんじゃないつー構造が最高。例えば祥子の死の真相。波香に薬を飲ませたのが誰だったか。真実はひとつだとしても、そのすべてを知るのは当事者のみなのね。ちなみに、雪月花のトリックは、前提となってる基本作法がなかなか頭に入らなくてしんどかったな。。あと、結局のところ7人いたら成り立たなかったのでしょうか? って疑問も残ったんだけど、ま、全体としてヒジョーによくできた作品と思いました。面白かったから一気に読めたぜ。

by april_hoop | 2005-10-02 00:00 | 出版


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