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2006年 04月 11日
感想_分身
感想_分身_c0160283_0393460.jpg東野圭吾『分身』読了。鞠子は、母親に愛されていないと感じていた。真相のわからぬうちに、ある事件で母親が他界。数年後、鞠子は自分とまったく同じ姿をした双葉の存在を知る。彼女は何者なのか。2人の出生の秘密とは。ねじ曲げられた2人の少女の運命の物語。『変身』と対比してつけたタイトルだそーで。

内容的にも『変身』に通じるところのある、SFベースのお話。発刊当時と時代的なズレがあるから、今読むとなんとなく話の展開が見えるのも『変身』と同じ。それを加味しても若干ドラマ性に欠けたのは否めないところかと。でもでも先端科学への警鐘とともに、人間の業と情を織り交ぜる展開は、さすがに読ませるね。

本格推理モノとは一線を画す作品だから先が読めるのは全然構わないけど、その分読者を引き込むだけの切迫した心理描写とか突き刺さるようなセリフが要求される。そこで結局ネックになるのが女性主人公ってところ。度々指摘してきたけど、著者本人も『野性時代』の作品解説で女性を主人公に立てる事の限界を吐露しております。結果、扱うテーマも、構成も面白いのに、女ってフィルターを通さなきゃならなかった事でリアリティが損なわれ、ダイレクトに表現できなかった感じ。でもこの話、少年主人公じゃ魅力半減なことも確か。

ラストシーンはまずまず良かったと思うけど、この手の余韻の残し方も東野先生お好きですね。期待度が高すぎたせいか、スゲーイイ!とまではいかなかったけど、面白かったです。

by april_hoop | 2006-04-11 00:00 | 出版


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