2007年 12月 05日
感想_殺人の門
c0160283_8371584.jpgこれ、かなり異色本。東野圭吾『殺人の門』読了。田島和幸は裕福な歯科医の息子でありながら、祖母の死を機に家庭は傾き、一家離散のはめに。小学校時代から人生の節目、節目に現れる友人の倉持修。彼に何度も騙され、はめられ、裏切られ、その都度和幸の人生は暗転。和幸は倉持に対して黒い感情を抱き始め…。

主人公がどうにも愚鈍で、辛気くさい話なんだけど、ものすごくいろ?んな考察ができそうな小説だなー。メインに据えられているのは「殺意」。そして殺意と殺人の間にあるものはなんなのか。何度も人生を大きく狂わされた和幸は、倉持に殺意を抱きながらも実行までには至らない。いや、至れない。やっぱりそこには大きな何かが横たわっているから。それって何? でも、殺人は世間のあちこちで起きている。殺人犯と和幸はなにが違ったのか。殺意が足りなかったのか。

ねずみ講とか、「詐欺」の話もいくつか出てくるけど実在の詐欺事件をモチーフにしてるんですって。エピソード単位と全体プロット単位で「詐欺」を並行させながら、騙す、騙されるの論理を提示しているのも面白い。だって、詐欺事件では騙す方が悪いと思わせながらも、倉持に踊らされた和幸に対しては騙される方が悪いって読者に思わせるんだからね。この辺の心理的矛盾のつき方なんてさすが東野圭吾としかいいようがなく。

「悪意」もまた物語の重要なキーワードになっていながら、倉持の側の描写はないため、その存在は肯定しきれないというのも語れる要素。読むたびにいろんな気付きがありそうな一冊ですわ。でもほんと辛気くさいから楽しくはないんだけどね。でもでも読ませる力はある。

さて、「殺人の門」を開くカギはなんなのか。諦観? 無力感? 絶望? 怒り? 糸を切るものは人それぞれか。本書に明確な回答はないけれど、回答例だけはラストに用意されてたわ。コワイ、コワイ。
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by april_hoop | 2007-12-05 00:00 | 出版 | Trackback | Comments(0)
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