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2008年 04月 06日
感想_東京湾景
<c0160283_004247.jpgドラマと全然違うじゃん! 吉田修一『東京湾景』読了。品川埠頭の港湾労働者、亮介が出会い系サイトで出会った涼子。1度会ったきりだった彼女にふとメールを送ると、返信が帰ってきた。心では人は繋がれないと思う亮介。心の底で繋がることを諦めた涼子。東京湾を挟んだ近くて遠い2人の想いは。

ドラマがあまりにも酷かったからずっと敬遠していた本作。がしかし、すごい良かった! 心に残った恋愛小説の1つに入れたいくらいですわ。吉田修一先生にしては、けっこうドラマチックな要素が盛り込まれつつも、基本は人間の奥底の繋がりたい心理であり真理をついたストーリー。なにげない描写がさすが秀逸で、ぐんぐん読めちゃいます。

お台場と品川という東京湾を挟んだ舞台を、「目の前にあるからといって近いとは限らない」とし、それを人と人の関係のメタファーとするのが基本設定。そして、目に見えないりんかい線というメトロによって距離が縮まるというのも、目には映らない心で繋がれるのかもしれないというふうに思わせる。

人物描写がまたいい感じで、亮介にしろ涼子にしろ語られる過去はほぼ1つだけなのに、かなりの立体感。お互いちょっとどもり気味に喋るのもなんだかリアル。大杉とゆうこの存在もかなり効いてるよね。でまあ、なんといってもコアになっているのは、誰かと心の奥底にある崇高なもので繋がっていたい、という願い。これにオレは強く共感しちゃうんですよ。劇中小説とか、『日蝕』のエピソードとか、設定が微妙という声もあるにはあるけど、オレはこの価値観だけで十分満足。同じ想いを抱えながらすれ違う2人になんとか結ばれてほしいと思ってしまいました。

なんとなうだけど、この本に流れる恋愛観を共有できる人とは相性が良さそうな気がするわ。

by april_hoop | 2008-04-06 00:00 | 出版


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