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2017年 01月 28日
感想_陽気なギャングは三つ数えろ
c0160283_11572082.jpgおかえり、ギャングの皆さん。相変わらずで何よりです。伊坂幸太郎『陽気なギャングは三つ数えろ』読了。久しぶりに4人は仕事を遂行し、今回も鮮やかに成功。後日、雪子の息子、慎一が働くホテルのロビーで集まった4人は、ちょっとしたトラブルに巻き込まれる。雲隠れした人気女優、それを執拗に追い回すゴシップライター、事件は思いもよらぬ方向へと展開し、4人はピンチに陥るが…!?

いやー、なんと9年ぶりにシリーズ新作が出るとはね〜とすぐポチったのに1年以上積ん読してたのか…。どっちにしても月日の経つの早すぎるだろ、なんてのはさておいて。面白かったです。4人の活躍は今まで通り、嘘を見抜く成瀬に、演説王の響野、スリの…って今更そんな説明は不要ですね。相変わらず、といいたけど、4人のキャラってこんなだっけ? 微妙に雰囲気変わった? とか思ったけど、何がどうというか、単に忘れてただけのような気もします。が、著者本人があとがきで微妙に気分が変わったようなこと書いてたので、少しは変わってたのかもしれません。防犯カメラだらけとか、スマホだらけとか、時代の変化を感じさせる描写がちゃんとあるのはさすが伊坂さん。

過去2作、思いもよらない布石がたくさんあったから、今回はなんかすごく構えながら読んじゃったね。慎一が鍵を握ってるに違いないとか、教習所で出会った女は何者だとか、久遠に怪我させたあいつがまた出てくるはずとか、うん、なんか伊坂さんがほくそ笑んでるのが見えそうな感じに手のひらで転がされてる気分です。そうこうしているうちに、するするとペースが上がって最後まで。雪子の運転さながら、車線変更をスムーズに繰り返しながら、信号変わり目をぶっちぎったり、突然のUターンありと、たっぷり楽しませていただきました。最後の方は早くページを繰りたくて、この感じ久しぶりだな〜と。小説楽しいな〜と。

前の2作ほどのインパクトはなかった気がするけど、シリーズファンは読んでおきたいし、そうでなければやっぱり一作目を読んで欲しいなーと思います。気楽にサクサク、電車のお供にちょうどいい感じでしょうか。また数年後に新作で会えたら嬉しいです。



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by april_hoop | 2017-01-28 00:00 | 出版 | Trackback | Comments(0)
2015年 03月 04日
感想_バイバイ、ブラックバード
c0160283_0305619.jpgちょっと伊坂さんの見方が変わった。伊坂幸太郎『バイバイ、ブラックバード』読了。星野一彦は、廣瀬あかりに別れ話を告げていた。理由は、繭美と結婚するからだという。星野とともにいるその繭美は、身長2m、体重200kgに及ぶ巨体にブロンドという異様な見た目に加え、ありとあらゆる攻撃性を兼ね備えていた。あかりは、とても納得がいかなかった。星野は、ある事情により恋人の前から去らねばならなくなり、繭美との結婚をでっち上げたのだった。あかりと、残る4人の恋人たちに別れを告げ、そして星野は…。
株式会社双葉社 | バイバイ、ブラックバード(バイバイ、ブラックバード) | ISBN:978-4-575-51565-7

久しぶりに伊坂作品読みました。最後に読んだのは『ゴールデンスランバー』だったかな。なのでかなり久しぶり。これが予想外に楽しかった。伊坂作品は、狙いすぎ、作り込みすぎという印象に抵抗感がちょっとあったんだけど、これはその傾向はありつつも、あまり嫌な感じがしなかった。

何が良かったのかと言えば冒頭の星野と廣瀬の出会いの感じの良さかな。二人とも魅力的だった。星野の正直さと、廣瀬の少しとんがった感じが。そしてそれが、2章、3章と、テンプレートになっていたとは予想外。え、と戸惑いつつも、それらがどこにたどり着くかを楽しみに読み進めました。が、まさかのオチなし! えーって感じもしたけど、まあこれでいいのかもね。答えがあるばかりが小説じゃない、ってことで。でもまあ単行本出たのが2010年なので、今とはだいぶ時代が違うからな。今だったら、タイムマネジメントの時代だから、オチのない小説への許容量は減っていたかもしれないね。だからこそ、逆の逆でそれがいいんだけど。(なんのこっちゃ)

星野は、最初の印象は結構スマートだったんだけど、だんだんそれよりもバカ正直さの方が強くなりすぎて、最後の方は魅力半減も、女の子たちが皆魅力的でよかったね。ベストは廣瀬。次が如月で、その次が霜月、で神田で、最後の女優の順かな。繭美はうまくビジュアライズできないんだけど、女装したブロンドの曙を想像すればいいのかな。もしくはマツコがブロンドでハーフ顔?(2010年はマツコもまだ出てない?) 星野と反比例して、彼女はどんどん人間味を増してったね。なかなかいいコンビだったと思います。映像で見たい気もするけど、繭美をどうすればいいんでしょうね。まあゲテモノキャラだから男が女装するってことでいい気もする。阿部ちゃんとか?(幅は足りないけどご愛嬌)

ところで、あとがきに伊坂さんのインタビューが載っていて、これって企画物小説だったんですね。「ゆうびん小説」なる名前で、各章が書きあがった時に応募者50人に送られたんだそう。で5章分が送られ、6章目を書き下ろして単行本化したんだそう。ユニークですね。そしてさらに、太宰治の未完の遺作『グッド・バイ』が下敷きになっているそうで、それは気になるので読んでみなくては。され、このインタビューは伊坂さんの小説観が垣間見れたよ。形にすごくこだわりがあるということや、ありきたりではないものを作りたいという理性的なものが強いということ、遊び心が強いことなど、作風が腑に落ちるというか、やっぱりな、と思える内容でした。それを踏まえて、7〜8年前の作品とは、今回が企画物というのを差し引いても変化、進化をしてるんだろうなーと思ったな。つい好きな作家ばかりを追い続けてしまうけれど、人は変わるもの。時々こうやって作家の変化に触れるのも楽しいものだよな、と思ったり。金原ひとみとか、初期と全然違うしね。他にも、なんとなく離れちゃったけど今読んだらまた新たに魅力を発掘できる作家さんたくさんいる気がするわ。小説家再訪の旅、しようかな(時間ないかな)。
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by april_hoop | 2015-03-04 00:00 | 出版 | Trackback | Comments(0)
2014年 12月 18日
感想_ゴーン・ガール
c0160283_264342.jpgc0160283_264514.jpg映画通り! ギリアン・フリン『ゴーン・ガール』読了。5回目の結婚記念日、妻のエイミーが消えた。夫ニックはすぐに警察に届け、捜索が始まる。しかし出てくるのは、ニックを犯人と示すような証拠ばかり。世間の目もやがてニックに疑問を投げかけ始める。確かに夫婦生活は破綻し、ニックは浮気もしていた。しかし真相は…!?
ゴーン・ガール 上 | 小学館
ゴーン・ガール 下 | 小学館

映画『ゴーン・ガール』がかなり面白かったのでその勢いで原作を読んだのですけど……映画と同じだったー! 原作通りの映画化という噂だったけど、本当にそうだったわ。基本、サスペンスであり、オチが命な作品なため、オチを知った状態で読むのはけっこう…楽しめなかったぜ。。いやまあ、映画を反芻するような気持ちでは楽しめたんだけどねー、これは先に読むべきだった。原作→映画のほうが、筋がわかっててもそれをどうビジュアライズするのか、という楽しみがあるからね。もしまだこれからという人にはその順番をオススメします。映画だけでも十分楽しめます。

ただ、夫婦関係について思うところは、小説の方がじっくり描かれてたし感じ取れた。この奇妙にねじれた共犯関係の面白さ。どんな夫婦も完璧ではないし、欠点を補完しあえるものでもない。でも月日を重ねることで徐々にその距離は近づきサイクルは相似を描き始めるんだろう。そしていつしか、夫婦が家族になっていく。必要なのは時間、そして相手への興味と思いやりか。

決着がついてからのふたりの変化も面白くて、お互いにそれを自覚しながらねじれた同居を続けるところも映画より長く描かれていて面白かったね。でもどっちにしても夫婦っていう永遠に解けないクイズみたいだよね。なんかもう一度映画見たくなっちゃったなー!
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by april_hoop | 2014-12-18 00:00 | 出版 | Trackback | Comments(0)
2014年 12月 01日
感想_雪沼とその周辺
c0160283_0222811.jpg人も時代も移ろい、巡る。堀江敏幸『雪沼とその周辺』読了。郊外の山あいの町、雪沼。小さなスキー場のあるこの町に暮らす人々の、つつましくも豊かな巡り会いと人生の物語。芥川賞作家の7つの物語からなる連作短編集。
堀江敏幸『雪沼とその周辺』|新潮社

堀江さんの本を初めて読み、お名前は存じてましたが芥川賞作家ということは知りませんでした。本作が川端康成文学賞受賞作ということも。たまたま京都の「世界文庫」で目に止まって、ああ堀江さん読んでみたかったんだよな、ってノリで手に取った出会いでした。僕の好きなタイプの連作であり、穏やかだけど洗練された過不足のない文体もツボでした。

舞台はタイトル通り、雪沼という町であり、その周辺に暮らす人たち。今日で店じまいのボウリング場。主人を亡くした小さなレストラン。昔ながらの経営を続ける町工場。そのすべてに小さくとも等身大の暮らしがあり、そしてそこには人の人生があって、巡り会いがある。とりわけドラマティックではないかもしれないけれど、だけどやはり生きてきた時間分の物語が詰まっている。夢を与えたり涙を流させたりはしないけれど、心のすきまにじわっと染み込んでくる。ああ、僕も大した人生を送っていないけれど、それでいいんだって思わせてくれるような。いや、本書が変に自己肯定を押し付けてくるわけじゃない。あくまで物語は淡々としているし、厳しさや寂しさもはらんでいるんだけど、なんていうかその普通っぽさこそリアルなんだよね。

この本が出たのが2003年で、10年以上前にしてこの感覚をすでに持っていた堀江さんがすごいなぁと。震災があり、スマホ時代となり、氾濫する情報に翻弄されまくっている今、この雪沼の静けさと地に足ついた感覚には人を惹きつけるものがあると思う。地方移住を考えたり、実践したりしている人には、これこそ求めているものだ!って思わせるかもしれない(表面的に)。

なんか僕たちは共同幻想を見ているのかもなぁ。インターネットがまるで僕たちがすごい力を得たかのように思わせるけれど、人間自身がそんなに進歩しているわけではなくて、なんだか勝手に実体のない大きな旗を振りかざしまくっているような。そこにはレンガひとつの重みも、凧が受ける風の力もなくって、「できる気になっている」「どこか勘違いしている」んじゃないかなーとか、そんなことをこの本を読んで感じました。僕たちは遠くのナニカよりも、もっと目の前の人の顔を見て、日々の思い出を共有し、風とか音とか色とかを味わいながら暮らしていくくらいがちょうどいいのかなって。できる(気がする)ことが増えて、遠くまで行けるようになっ(た気がして)て、ついついもっと先へ、もっとたくさんを、って思っちゃうけどね。

旅先で偶然手に取って、そしてずいぶん時間がたって開いた本が、とても心地よくて。こういうの、すごく嬉しいことだよね。とてもよい本で、オススメです。
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by april_hoop | 2014-12-01 00:00 | 出版 | Trackback | Comments(0)
2014年 11月 21日
感想_ソロモンの偽証(負の方程式)
c0160283_15481317.jpg宮部みゆき『ソロモンの偽証』書き下ろし短編「負の方程式」読了。精華学院の中等部で事件が起きた。学校行事である、体験キャンプに参加した子供たちは、教師の火野から生徒たちの人権を無視したようなひどい扱いを受けたという。一方の火野は、そんなことは事実無根だと、双方の出張は真っ向から対立した。いったい嘘をついているのはどちらか。私立探偵の杉村が事件を調査する途中で現れた女性弁護士の藤野もまた、事件を調べていた。
宮部みゆき『ソロモンの偽証』|特設サイト|新潮社

はい、この藤野さんはもちろん涼子たんです。ということで、ソロモンの偽証スピンオフは、あれから20年後の設定。野田は教師になってましたが、涼子たんは、検事でも警察でもなく弁護士になっておりました。そして、神原くんと結婚して子供にも恵まれておりました。これはまたずいぶん読者サービスな設定ですね。彼ら彼女らの青春時代を想像するのもなんだか楽しいです。ちなみに神原くんは研究職についたようで。

事件そのものは、生徒たちがある個人的な思いから火野をハメたというものでした。涼子は、彼らに怒りをおぼえます。なぜ、そんな姑息な方法に頼ったのだと。正々堂々と、証拠を集めて戦うべきだったと。どこまでも正論を貫くところは変わらないなーと思いつつ、やはり普通の中2にはそれはできないよな、と。子供たちがみずからの正義感で行動するくだりも、大人の事情を顧みない子供視点を強調していたように思います。人は、いろいろな背景と顔を持っているということ。今見えている部分がすべてではないこと。基本的には『ソロモン』で語られていたことと同一なのかな。

真実ってひとつじゃない。同じ事象に対しても、真実は人の数だけあるんだよな。思い込み、願望、自意識、他人の目、そう思うと本当に人間て面倒だし、社会ってややこしい。だけど、それがこの世界だし、希望も絶望も普通にいっしょくたになっているんだよな。いいことばかりでも、悪いことばかりでもなくて、それが普通。普通でおもしろい。そんな世界がけっこう好きです。

ということで大長編、これにて完結。宮部さんらしい、重厚なミステリであり、子供たちを温かく見守る青春小説であり、そして真実をめぐるテーマ性もあり、堪能させていただきました。スピンオフの藤野弁護士シリーズ、続いてもいいな〜。

第1部 事件 上巻 第1部 事件 下巻 第2部 決意 上巻 第2部 決意 下巻 第3部 法廷 上巻 第3部 法廷 下巻 書き下ろし『負の方程式』
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by april_hoop | 2014-11-21 00:00 | 出版 | Trackback | Comments(0)
2014年 11月 20日
感想_ソロモンの偽証(第3部 法廷 下巻)
c0160283_15443968.jpg宮部みゆき『ソロモンの偽証(第3部 法廷 下巻)』読了。裁判はいよいよ大詰めを迎える。橋田の証言が法廷を揺るがす。今野なる弁護士が証人になる。増井望もきた。そして被告人への尋問がはじまる。神原は容赦なく追求する。塾の先生も立つ。そして、ついに神原その人が証言台に立つ。彼が語る言葉は…。そして、閉廷を迎えた。
宮部みゆき『ソロモンの偽証』|特設サイト|新潮社

ついに、裁判が終わった。すべてを知っていたのはやっぱり神原で、それは予想を上回るようなできごとだった。居場所を作れなかった柏木君は、唯一信じられた恩師を失い、そして唯一心を許せた友さえも失った。結局、彼もまた14歳だったのだ。どれだけ頭がキレ、達観し、世間を見下していようとも、所詮は14歳。自分の心を御することができず、持て余した体を投げ出したのだ。遺書になったノートは、そんな彼の小ささを表していた。孤独、自我、生きる意味、それらを語る彼の言葉はあまりにも幼かった。

そして、真相はほぼ明らかになってなお、彼の最期は語られなかった。誰にも、わからないのだ。本当に彼は身を投げたのか。本当は思いとどまったのに足を滑らせたのではないのか。第三者が現れたとはさすがに言わないけど、彼が自らの意志によって命を絶ったとは言い切れないと強く思った。真実は、本人にしかやっぱりわからないのだと。

それにしても、生徒のみんなは立派すぎて立派すぎて、到底太刀打ちできないわ。ヤマシンとか最高すぎるし、神原も野田も格好良すぎるし、陪審員のみんなも美しいし、涼子たんはもうグレートだわよ。僕のひとつかふたつ年上という時代設定だと思うけど、こんなまね絶対にできなかったわ。

だけど、心残りがある。涼子が日常の中で感じていた、自意識と周囲との関係性の間で揺れる自己嫌悪はどうなったんだろう。この一件を通して彼女なりに自分の中の自意識と折り合いがついたのだろうか。普段の学校生活では見えない、級友たちのさまざまな面を見て、涼子はなにを思ったのか。どんなふうに成長したのだろうか。まり子に対してどんな態度を取るのか。それが、いちばん僕が知りたかったことだったけど、そこは結局スルーされてしまったな。樹里の激しい敵意も、最終的にどこへ行くのか、どこにも行かないのか。柏木くんの死の真相よりも、裁判を通して、そして15歳になる彼らがどんな一歩を踏み出すのか、そこを書いてくれなかったのはちょっと残念。スクールカーストについての話だと思って読み進めてしまった部分もあったもので、その点は消化不良も少々。

そこまで踏み込むのは野暮だからあえて書かなかったのかもしれない。この裁判をやり遂げただけで十分な変化かもしれない。その先については推して知るべしということか。でもやっぱそこは、少しだけでも触れてほしかったなー。宮部先生は、着地がちょっとさらっとしすぎているのかもしれないな、とふと思ったわ。『模倣犯』とかもそうだったような、そうでもなかったような(完全に忘却の彼方)。一応、書き下ろしもついてるけどさ。

ところで、どうして時代設定が1990年なんだろうって思ってたけど、これ9年くらい連載してた作品なんだね。現代にすると、どんどん時代が変わっちゃうから過去にしておく必要があったのかなと思います。もしかしたらパソコンとか携帯とか出てきちゃうといろいろややこしいとか、現実的な理由もあるのかなー。なんて邪推もしたり。

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by april_hoop | 2014-11-20 00:00 | 出版 | Trackback | Comments(0)
2014年 11月 19日
感想_ソロモンの偽証(第3部 法廷 上巻)
c0160283_1543129.jpg宮部みゆき『ソロモンの偽証(第3部 法廷 上巻)』読了。いよいよ学校内裁判が開廷した。次々と召喚される証人たちと、繰り返される尋問。検察側、弁護側、それぞれの筋書きにそって裁判は進む。同級生、教師、親。そこから語られるのは、はたして。
宮部みゆき『ソロモンの偽証』|特設サイト|新潮社

最終局面は、淡々とスタート。これまでの展開をもう一度じっくり振り返るように進んでく。あらためて何が起きたのか。12月24日を中心に、それ以前、それ以後のあらゆることが法廷に持ち込まれる。柏木君はクラスでどんな様子だったのか。発見当時はどんな動きがあったのか。彼の子供の頃は。不登校になってからは。

知っている顔と、初めて出てくる顔とが互い違いにそれぞれの証言をしていく。あらためて、他人のことを知ることの難しさについて考える。誰かの言葉も、行動も、それは事実としては残るけれど、真実かどうかなんて絶対にわかりっこないということ。どんな言葉にも裏の意味があり、どんな行動にも伏線がある。目に見えるものだけがすべてではないし、人は白と黒だけにわけられるものでもないし、仮にわけられたとしてもその割合がずっと一定なはずもないし。

物語として序盤から中盤にかけての疾走感はもうない。少しずつ、近づいているように見えて、なんとなく遠ざかっているような気もしてくる。結局本当のことなんてわからないんじゃないか?っていう疑問。それでも裁判は続く。本当のことを知りたいという気持ちで。井口がやってくる。樹里は非公開の中で主張する。そして、橋田もやってきたのは興奮したな。なんとなく。

積み重ねてきた細かな伏線が積み上がっていく。真相は果たして明らかになるのかしら。判決まであと1冊…!

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by april_hoop | 2014-11-19 00:00 | 出版 | Trackback | Comments(0)
2014年 11月 18日
感想_ソロモンの偽証(第2部 決意 下巻)
c0160283_15402864.jpg宮部みゆき『ソロモンの偽証(第2部 決意 下巻)』読了。裁判に向けて、検察側、弁護側、双方の調査が進む。大出のアリバイと家の事情。柏木君の学校内での行動。少しずつだが新たな情報が集まる中、大出の父親が逮捕されるという事態に。衝撃の展開に動揺を隠せないメンバーだったが、大出はあらためて身の証を立てる決意をする。そして……樹里に声が戻った。
宮部みゆき『ソロモンの偽証』|特設サイト|新潮社

裁判の準備の数日間。数日間とは思えない情報量と行動力だなってのはさておき、めまぐるしくイロイロ起きすぎて、ちょっと混乱というか整理しきれなくなってきたわ。まあそれはさておき、最大の焦点は、神原はなにを隠しているかの1点だね。

小林電気店の電話ボックスにいたのは神原でキマリだとは思うけど、それがなにを示しているのか。彼と柏木にはかなり深いつながりがあり、柏木の死に直接関与していることも間違いない。だから責任を取りたいと思っている。この裁判で真相を明かすつもりなのか、彼にもわからないことがあるのか。そもそも神原の過去も隠されている。彼の語る両親の事件は、完全な嘘ではないかもしれないけど部分的に改変しているような気がする。

一瞬、彼の両親にあったなにかが、大出家の商売とからんでいて、大出家への復讐を考えているんではないかって思ったりもしたけど、その線はさすがに考えすぎか。もしくは、本当は自殺しようとしていたのは神原だったのではないかとも思う。柏木は本当はそれを止めようとしていたんじゃないだろうか。そこでなにがしかの行き違いがあって悲劇が起きたとか。そして、樹里は本当になにかを見ていたのかもしれない。ただ、彼女がついた嘘は、デタラメをでっちあげたことではなく、誰かを見たを、大出を見た、とすりかえたことなのではないだろうか。いやでもさすがに神原がそこにいたというのは考えにくいか。いよいよ真実がわからないな。そもそも真実ってそういう性質なものなのかもしれない。少なくとも、神原もまた救いを求めていることだけは確かだ。誰かに、なにかを伝えたがってる。彼を救えるのは、涼子しかいないという気もする。

そして、柏木君自身のことについても、実はまだほとんどなにも語られていないということをあらためて思い出しておかなくては。序盤の兄の心象だけで、限りなくグレーな印象を持っているけれど、それってかなり偏った認識だな。やっぱり彼も辛かったのではないだろうか。頭とは違って思うようにはならない体。健康で、自由な翼を持っている兄へのコンプレックスもあったに違いない。自分もそんなふうに動けたら。でもその願いはかなわず、両親の束縛からも逃れられず、心は歪みを抱えていった。もしかしたら、柏木の部屋をひっくり返したらなにか出てくるんじゃないだろうか。大量の本の間からとか。なにかメッセージが残されているような気もする。塾の先生もやっぱりなにか知っているような気がする。

いよいよ裁判が始まる。どんな真実が飛び出すんだろう。どんな結論が出るにしても、彼らの未来が開けてることを願うばかりだ。カギを握ってるのは茂木ちゃんかもな。探偵事務所には頼みづらいけど、茂木ちゃんは自由に動けそうだから。

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by april_hoop | 2014-11-18 00:00 | 出版 | Trackback | Comments(0)
2014年 11月 17日
感想_ソロモンの偽証(第2部 決意 上巻)
c0160283_15374068.jpg宮部みゆき『ソロモンの偽証 第2部 決意 上巻』読了。涼子は、真実を明らかにするため、校内裁判を起こすことを決意し、賛同者を集め始める。野田、向坂、まり子に始まり、縁のなかった不良の恵子、さらには柏木と同じ小学校だったという他校の神原らが参加し、学校を説き伏せ、裁判の開催が決定。弁護側、検察側に役割をわけ、いよいよ調査が始まる。
宮部みゆき『ソロモンの偽証』|特設サイト|新潮社

もはや涼子、中2とは思えない行動力! 涼子もそうだけど、神原とか、井上とか、中2ってこんなに冷静で頭回るもんだったっけ?? 大人とも渡り合い(一応、緊張とか汗をかいてとか、描かれてはいるけど、そうは思えないって)、どんどん調査を進めていくのが頼もしいやら痛快やら。大出との関係も深まり、三宅樹里の母の失策によりことは動き始める。このあたり、小説だから仕方ないけどエンターテインメントだよな~とか思いつつ。

ふと、自分は当時先生たちにどう思われてたんだろうな~とか思ったり。特に問題を起こしたこともないし、面倒がかかる生徒ではなかったと思うけれど。授業を真剣に聞いていたわけでもないし、でも参加はちゃんとしていたし、大人になった今聞いてみたいよな~。親経由で多少聞いたことあるのはあるけれど、それも面談の話だしどのくらい本当のところなのか。時代設定は1991年。それってまさに僕が中学2年生の年。なんだか懐かしく思い出されます。

しかし、初登場の神原君、まだまだ裏がありそうだよなー。柏木とはどんな関係を持っていたのか。そして彼自身にどんな過去があるのか。本当は彼は真相を知っているのではないだろうか。少なくとも、柏木の当日の動きとかに、涼子や野田が知らないことを知っていそうな気はするのだけど。その他、ごろうくんや一美ちゃん、用心棒山本君あたりもいい味出してるねー。学校てところは無限にキャラ出せるのも面白いですね。もう少しかき乱すやつが出てきてもよさそう。

あとは、モリリンの無実が晴れてよかったね。逆襲も見たいとところ。そして悪者まっしぐらの茂木も、最後にいいところ見せて大逆転してくれるような気もしてるよ。まだ物語は折り返し地点。あと100個くらい驚きのドラマが待ってそうだなー。期待大。

それにしても実写化、ものすごく大変そうだなー。映画2部作より連ドラ向けな気もするけれど~。モリリンが黒木華ちゃんというのは残念だ。。華ちゃんに罪はない。しかし…。佐々木希たんがよかったなー。

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by april_hoop | 2014-11-17 00:00 | 出版 | Trackback | Comments(0)
2014年 11月 16日
感想_ソロモンの偽証(第1部 事件 下巻)
c0160283_15343381.jpg宮部みゆき『ソロモンの偽証(第1部 事件 下巻)』読了。校内の調査で告発状を出したのは三宅樹里とほぼ特定したが、学校は慎重に事を運んでいた。その頃、野田健一は思いつめていた。身勝手な両親の振る舞いがゆるせず、自分を守るために行動を始めるが、計画は幸いにも失敗に終わる。そして、誰も知らなかった3通目の告発状の存在が明らかになる。こともあろうかそれがマスコミに知れたことで、学校は窮地に立たされる。柏木卓也は本当は殺されたのか?
宮部みゆき『ソロモンの偽証』|特設サイト|新潮社

おおお、さらに登場人物増えて加速度増しまくり。まずは、野田くんのエピソード。周到に計画し、だけど実行段階で頓挫した野田くんの計画。長きにわたり抑圧されていた気持ちが暴走しながら最後の最後で良心が止めるのだけど、地獄の淵で見たその顔は自分自身だった。どんな人間にも悪意はある。そのいちばん根っこには見たくないほどの残酷な悪魔がいる。それは他の誰でもなく、何でもなく自分自身だ。親のせい、学校のせい、社会のせい、友達のせい、かもしれないけれど、どんな理由があれど、最後の最後にそこにいるのは自分だと言っているのだと思った。自分のことだから自分で最後はケツをふかなくちゃならない。そいつがどんな顔をしてもだ。辛いエピソードだけど、向坂くんの友情に温められるし、ふんばった野田くんも褒めたいわ。そして涼子パパ、無敵すぎるぜ。

さて、報道記者の茂木、わかりやすくむかつくキャラだなちくしょう! しかしこの存在が教えることもある。人間は嘘をつくということ。小さいものから大きなものまで。よかれと思ってつくものから、悪意をもってつくものまで。それは仕方のないことだし変えることはできない。でもそれをどうとらえるかで物事の見方は変わる。相手の言っていることを疑わないことと、はなから嘘かもしれないと疑ってかかること。それだけでたったひとつの真実は真っ二つに割れることになる。モリリンは「そんなもの知らない」と言った。状況証拠は嘘であることを示す。でも僕たちは宮部先生のおかげで知っている。モリリンはそれについては嘘をついていない。しかし、茂木は疑いから入っているのでそれを信じることはない。「そんなことはありえない」という。もちろん彼も、本当に100%ありえないとは思っていないのだろうけど。ああここも難しいな。人は、言葉から物事を推し測るしかないのだけど、その言葉が100%なことなんて滅多にないのだ。どっちかわからないけれどイエス、なことも多いのだ。もしくは今はこうしておきたいからイエス、ってこともある。茂木は目的のための戦略としての言動なので、ますます信用できない。まだ、彼の一人称パートはない。いつかあるんだろう。そこで何が語られるのか楽しみだな。

それにしても、松子の死は途方もなく悲しかった。松子の両親の悲痛なる叫びも。彼女が自分のコンプレックスを乗り越えて、明るく生きる姿は、会ったことなくても好感が持てた。そんな彼女が死ななくてはならないのはあまりにつらい。彼女は、「信じる側」の人間だった。だからこそ悲劇は生まれたという皮肉もまた哀しい。さらに皮肉なことに、この悲しすぎる事故がクラスメイトになにかを促す。そして涼子は立ち上がる。

なんとなく物語の外郭は固まったような気がします。もう終わりに向かうことだってなんとなくできそうなのに、まだ1/3。これ以上の衝撃が待っているんだろうなと思うと楽しみすぎるな。野田くんが会った彼は誰なんだろう。柏木君を最後に見た電話ボックスのおじさんは再登場するのかな。おそらく、柏木君とは何者だったのかを探るフェーズが出てきそうだから、柏木兄が第2部を引っ張ったりするのかなーと思います。彼の冷静さ、とても好きです。涼子とデキちゃえばいいのにw

第1部 事件 上巻 第1部 事件 下巻 第2部 決意 上巻 第2部 決意 下巻 第3部 法廷 上巻 第3部 法廷 下巻 書き下ろし『負の方程式』
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by april_hoop | 2014-11-16 00:00 | 出版 | Trackback | Comments(0)