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2017年 02月 04日
感想_旅をする木
c0160283_20430163.jpg決めた、アラスカに行く。星野道夫『旅をする木』読了。26歳でアラスカにわたり、その地で見て聞いて触れた、圧倒的なまでの世界を綴る。

なんとなく手が伸びなかった星野道夫に初めて触れました。ものすごく良かったです。なぜもっと早く手にしなかったのかと後悔しています。できれば10代の頃に出会っておきたかったよ、20年遅いよ、という思いですが、でもこれ以上遅くならなくて良かったという安堵も少々。

アラスカの風景が目に浮かびます。白夜、オーロラ、カリブーの群れ、氷河、エスキモー、その他、吹き抜ける風や、マイナス50℃という寒さまで。優しく、理性的な語り口は、いたずらにアラスカを礼賛するわけではない客観性があるので、抵抗なく受け止められます。そしてそれ以上に大切なのは、その自然を目の前にして、星野さんが人生の真理に触れていくこと。

すなわち、すべてのものは一つ所に止まることなく動き続けているということ。人間の文明はとても便利だけど必ずしも私たちを幸福にしているわけではないということ。世界は広いということ。それよりも大きな宇宙があるということ。自然は恐ろしく、それゆえに美しいこと。普遍的すぎるかもしれないけれど、でも、この一つの極地で暮らしているからこその説得力があるんだよね。僕が一番響いたのは、自分が今こうしているのと時を同じくして、別のところではクジラがとんでもないジャンプをキメてるかもしれないし、名曲が生まれてるかもしれないし、そういう広さが世界にはあるということ。僕もそういうことは心のどこかで考えていたけれど、そういえば最近は忙殺されて忘れていたなー。

効率や、合理に慣れすぎてしまった今、圧倒的な不条理に、猛烈にひかれました。それは現実逃避かもしれないけれど、でもそれもまた現実だよね。決めました。息子が高校生になったら、家族でアラスカに行こう。そうだ、中学生になったらアイスランドにも連れて行こう。どっちもきっと彼の人生にいい影響を与えられるような気がする。というか、僕自身がものすごく行きたくなったというのが、ほとんど全部なんですけれど。

ブルータスの星野道夫特集も読むことにしよう。イントゥザワイルドももう一回見よう。そうしよう。



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by april_hoop | 2017-02-04 00:00 | 出版 | Trackback | Comments(0)
2015年 02月 26日
感想_旅するバーテンダー
c0160283_2302327.jpgお酒をめぐる冒険! 『旅するバーテンダー』読了。浅草のBAR DORASのオーナーが、お酒の仕入れでヨーロッパを巡った際の紀行文。ただし、ただお酒を仕入れるだけではなく、お酒が作られた背景からその土地の文化まで含めて味わうための旅。2011年のスペイン〜フランス、2012年のスコットランド、2013年のポルトガル〜フランス、3つの旅が綴られてます。
書籍出版 双風舎

何かのサイトでちらっと書評を見たんだけど、バーテンダーさんがお酒を背景ごと仕入れる旅と聞いたらとびつくよねー。お店で出すお酒は必ず現地で味わうというポリシーもすごいし、その食文化も合わせて伝えたいというのもかっこいいじゃない!って感じでネット書店で購入。いやー、羨ましすぎる旅の様子が綴られておりました。

まあとにかくどこへ行っても飲むわ食べるわ。酒屋に行ってお酒を買い、ビストロでお昼食べながら飲み、夜は夜でレストランに繰り出して飲んだ上にハシゴして。とか、ワインの醸造所を訪ねて仲良くなって食事に招待されてレア物飲んでとか。特にこだわってるのはコニャックとスコッチだそうで、それぞれへの思い入れはさらにたっぷりと綴られています。テーマを持った旅が楽しいというのはわかるけれど、さすが本職だけあってここまで徹底していると本当にすごい。しかもとにかく貪欲。同じ工程をたどったとしても、そんなに飲めないし食べられないよってくらいです。それだけじゃなく、正装してオペラ鑑賞もしてるし、教会も巡ってるし、さらにはサーファーだそうで海にも入ってるし。寝てなさすぎでしょう! 無尽蔵のスタミナ!

いやもうこれは、とにかく浅草のお店に行ってみないとですね。バー好きな上司に聞いてみたら、やはり有名なお店らしいです。ちょっと偏屈という噂もありましたが、さもありなん。この本読めば十分それも伝わります。紀行文としては、ちょっと自己陶酔が激しいので、万人にウケるタイプではないと思いますが、それでも旅好きを嫉妬させるには十分なんじゃないかと思います。

それにしても世界には改めていろんなお酒があるね。スコッチ、コニャック、ワイン、ポートワイン、シードル、カヴァ、ビール、とざっくりでこんなに出てくるし、さらにカクテルも膨大にあるし、ヨーロッパだけでこれだもんね。つい僕はビールと、せいぜいワインくらいしか飲んでなかったけど、もったいないな。もっとその土地のものをちゃんと味わおう!と決意しました。でもその前に目指すは↓浅草だ。
AR DORAS  Door of Riverside
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by april_hoop | 2015-02-26 00:00 | 出版 | Trackback | Comments(0)
2015年 02月 25日
感想_ヒップな生活革命
c0160283_22364438.jpg話題の1冊ですね。佐久間裕美子『ヒップな生活革命』読了。リーマンショック以降、アメリカで新しいカルチャーが台頭し始めている。それは、顔の見える生産者を選んだり、自らの手を動かしてものづくりをしたりして、自身の暮らしを自分でちゃんと選ぶというスタイル。大量生産大量消費時代を終え、新たな局面に入ったアメリカの最先端を、現地在住ライターがリポートしています。
idea-ink

簡単に言えば、何かと話題のポートランドと、ブルックリンの話ってことになります。こないだ上陸したばかりのブルーボトルコーヒーも、この流れと同じ線上にありますね(サンフランシスコからだけど)。どこの誰が作っているのかわからないものはもうごめんだ!ってことで、自分が信頼できるもので暮らしのものを用立てようということ。それも、なるべく環境に負荷をかけない形で、適正な対価を支払って、というのが理想。エコやロハスとも親和性高いし、インターネットなくしては成立しえないスタイルですね。全てが飽和した今、人々が求めたのは「正しさ」だったと思うとなんだか興味深いです。

2013年と、こないだの年末年始、2度ニューヨークに行き、ブルックリンにももちろん足を運んで、このカルチャーを生で体験してきました。とても勢いを感じたし、何より楽しかった(海外旅行だしね)。なんというか、社会的にも意義のあることなんだろうし、それ以上に個性豊かなので楽しいですね。小規模なものがたくさん乱立してるから、画一的じゃないのが見ていて楽しい。ブルックリンフリーとか、スモーガスバーグは、ブランド物や5ツ星レストランとは全く別の地平で存在していて、どちらが良い悪いというよりは、どちらにもそれぞれの良さがあって良いな、というのが僕の感想でした。コーヒー屋もいろんなお店があったし、アイスやビールも、ローカルかつクラフトマンシップにあふれたものがたくさんあった。デザインも洗練されてるしねー。

インターネットによって情報が激増した今、ブランドロゴだけではものの価値が担保されない時代です。どんな哲学を持って、どういうプロセスを経ているのか。そういうバックストーリーまで含めて比較検討するのがスタンダードになった今、こういうヒップなものたちは小回りが利くので強いのだと思います。たくさんは作れない代わりに、すべてをオープンにできる。そして確かなものを作れる。そこに価値を見出す人と直接つながることで、継続性も生まれる。こういう消費者と生産者のダイレクトなやりとりこそ、ずっと欲しかったけど叶わなかったものなんだろうなと思いました。これらって決して安いもんじゃないから、買う側にもリテラシー求められるしね。

東京にもこの動きは続々と入ってきていますね。独立系のコーヒー店は溢れかえってるし、マーケットなどで生産者から直接野菜を買ったりすることも多い。さらに日本で面白いのは、地方との連携かもね。ご当地モノがいろんな形で展開されているし、日本は地方も近いから現地のヒップにアクセスすることだって可能。作家ものの器を工房を訪ねて買ってみたりとかね。

このヒップ革命は当分続きそうな気配。そして、ポートランドに行きたい気持ちがさらに増すのでありました。今起きてることがわかりやすくまとまってて良書と思います。
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by april_hoop | 2015-02-25 00:00 | 出版 | Trackback | Comments(0)
2015年 02月 13日
感想_村上春樹、河合隼雄に会いにいく
c0160283_013937.jpg難しい話題も多いけど、大事な示唆も多い。河合隼雄/村上春樹『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』読了。小説家の村上春樹が、かねてより交流のあった臨床心理学者の河合隼雄を訪ねた対談を収録。アメリカ生活や、阪神大震災、オウム事件、湾岸戦争、そして『ねじまき鳥クロニクル』と言った話題から、物語の持つ力が浮かび上がってくる。対談は1995年11月に行われ、1996年12月に単行本刊行、1999年1月に文庫化されたようです。
河合隼雄 村上春樹『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』|新潮社

人生には「物語」が必要だ、というのが自分の中の一つのテーマというか指針なのですが、そう思うようになったのは、河合隼雄さんと小川洋子さんの対談を読んでから。その河合さんが、村上さんとも繋がっていたとなれば、読まないわけにはいきません。というか、読むの遅すぎだわね。今から20年も前になるので、事情は色々と変わっているけれど、今を予見するようなところもあるし、普遍的なところもあるし、で読んだ価値はありました。

「物語」の性質について語っておられるのかと予想していたけど、どっこい、結構難しい話題も多いというか、二人の会話のレベルが高すぎて、しょっぱなからデタッチメント(関わりがないこと)だのコミットメント(関わること)だのから始まって頭ショートしそうでしたわ。「アンビギュアス」って単語もわからなかったし(多義的な、曖昧な、ですか)。とりあえず、二人が何者でどういう関係かは前提として入れておかないと意味不明になります。お話も一つのテーマについて話すわけではなく、結構あっちこっち行ってます。

前半は割と、アメリカやヨーロッパと日本の「個」や「関係性」の違いみたいな話題が多くて、「ふーん」という感じ。後半は物語性と身体性の話がメインになってきて、グッと興味深い方向に。部分部分を拾うのが難しいのだけど、全体として受け取ったのは、人は多かれ少なかれ欠落や、困難、時に病的とも言える何かを抱えているということ。そしてそこからの救いとてに、物語的なものを求めているのだということ。村上さんは、小説を書くということで自らの欠落を埋めようとし、河合さんは物語の力を使ってクライアントと向き合っている。時代によってその役割は少し違えど、時には体制に反抗するために存在し、時には歴史を検証するために存在し、宗教とも結びついたりしながらそこにあった、と。

ただし、大量の情報、スピードや便利さを求めた結果、小説の力が相対的に及びにくくなっていることを村上さんは指摘。20年経った今、それはさらなるスピードで押し寄せてきていて、とんでもないことになっている。でも、今僕は、それに抗いたいのか何なのか、やっぱり本ていいなって思い直し始めたところだったから、そのタイミングでこの本に会えてよかったな。今は亡くなってしまった河合さんの言葉に触れられるのも本のおかげだし、その意味を思い出させてくれることにもなったし、本書の本質とはズレるかもしれないけど、僕にとってはいいタイミングでした。

ちと、本来お伝えすべきことがまとまりませんが。河合先生の著作は、もう少し色々と読み漁りたいと思います。
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by april_hoop | 2015-02-13 00:00 | 出版 | Trackback | Comments(0)
2015年 02月 04日
感想_家族写真は「  」である。
c0160283_14391951.jpg胸熱! 全家族必見! 浅田政志『家族写真は「  」である。』読了。『浅田家』で木村伊兵衛写真賞を受賞した写真家の浅田政志。『浅田家』ができるまでと、それ以降もこだわり続ける家族写真について、その活動を振り返りながらまとめた一冊。
亜紀書房 - 家族写真は「 」である。

いやーすごく良い本でした。浅田さんのことは、『浅田家』でしか知らず、その後も家族写真にここまで熱い思いとこだわりを持って撮り続けてらしたとは。そのきっかけが、専門学校時代の課題だったというのも面白いし、その根っこにあった小さい頃からの家族写真の年賀状というのも運命を感じるし。『浅田家』と言う作品も改めてより一層楽しく見ることができそうです。

でも、それは布石。そこからの家族写真の展開が胸を打つ。お兄さんの奥さんや甥っ子、そして自分の奥さんまで含めて家族写真が進化していくこと。自分の家だけではなく、日本中の家族写真を撮り続けていること。ここまで家族写真というものを見つめて、そこにある意義を考えて撮っておられたことに感動。さらに震災を経て、その意義がさらに強まっていることにも驚いた。確かに家族写真てどの家にもあって、でも今は手軽に撮れるゆえに重みが薄れているところもある。そこに、家族アルバムという形を与えることの大切さ。なんとなく思う部分もあったけど、より深く教えられました。僕も、震災後には写真洗浄のお手伝いをしたから、写真の持つ力はなんとなくわかっていたつもりだけど、その点に関しても、今まで以上に実感できた。

本当に家族ってやつは不思議なもので、唯一無二だけど、近すぎて見えなくなることもある。それを、時間や空間を超えてつなぎとめる写真のチカラよ! 動画とは違う、静止画だからこそこもる背景の物語や、その場の空気感や、個々が持つ感情や、過去や未来が、写るということ。そして色あせずに、物理的にはあせることがあっても、いっそう愛おしさが増すという事実。そこに向き合い続け、意味を生み出し、世に広める浅田さんの活動に心底感動しました。

残念ながら応募が多すぎて、みんなの家族写真を撮る企画は受付停止しているみたいだけど、僕も僕なりに家族の写真というのを残していこうと誓ったのでした。人生に楽しみが増えて嬉しいや。ありがとう、浅田さん!
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by april_hoop | 2015-02-04 00:00 | 出版 | Trackback | Comments(0)
2015年 01月 23日
感想_現代アートの本当の見方
c0160283_2172845.jpgNY行きの飛行機で読みました。『現代アートの本当の見方』読了。時に難解とも言われる現代アート。その、何を、どうやってみるべきなのか、を考察した一冊です。
現代アートの本当の見方 「見ること」が武器になる | 動く出版社 フィルムアート社

つまらなくはなかったけど、そんなに面白くもなかったかな。いろいろある現代アートのジャンルを引き合いにしながら、「見る」にもいろんなやり方がありますよ、という話をしています。例えば、絵画作品だったら、絵の具の質や、塗り方、など技術から道具にも注目しようとか。背景にあるストーリーやコンセプトにも目を配ろうとか。アーティストのキャリアに目を向けてみようとか。そんな感じ。

内容的にはもっともなことだけど、なかなか実践することは難しいなーと思いました。結局何をどんな風に見るにしても、前提となる知識が必要となってくることが多いから。美術ってやっぱりある程度文脈を理解しないとやっぱり楽しみにくいところはあるなーと思います。「好きに見ていい」と言われても、なかなか「すげー」とか「かわいい〜」とか以上のものって普通は出てこないからね。例えばその作家の過去の作品や展示を知っているかとか、前提となってるものを説明してもらわないと、やっぱりわからないですよね。この本は、それの解決には全くなっていないので。

でも、「見る」という行為にもいろいろあるという示唆は、美術だけじゃなくて日常生活には生かせるかなって思いました。例えばそこらですれ違う人にも、いろんな面があって、なぜその服を着ているのかとか、職業は何なのかとか、どうしてそういう行動をしているのかとか、これからどこへ向かっているのかとか、表面的に見えるものから、目には見えないものまで、「見る」「観る」「視る」「診る」「看る」といった行為は大事だと思います。本書の副題には「見ることが武器になる」とありますが、そこに込められているのは、物事を多角的に見ようねってことなんでしょう。ネット上を情報が氾濫する現代において、こういう姿勢は確かに大事。情弱になった瞬間生きにくい世の中だし、リテラシーを高めるためにも「見る」を重視する姿勢は必要だと思います。

やや投げっぱなしというか、企画倒れ感もある本ですが、言っていることはとてもまとも。今見えてるのは氷山の一角でしかないというのは、個人的に大事にしている考え方です。
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by april_hoop | 2015-01-23 00:00 | 出版 | Trackback | Comments(0)
2014年 12月 20日
感想_蒼井優 8740 DiARY
c0160283_201829.jpgわーい、蒼井優たまの本が出たよー。けっこう久しぶり? 『MORE』で3年間連載していたという、対談エッセイ。優たんがゲストを指名して、その方と対談するという企画。全33人が登場!
蒼井優 8740 DIARY|蒼井 優|対談/講演|BOOKNAVI|集英社

この3年間の蒼井優の仕事の履歴と重なる感じだったのが、楽しかったかなー。震災のときに出てた舞台『南へ』の頃のゲストが野田秀樹さんだったり。『るろうに剣心』を撮ってる頃のゲストが佐藤健くんだったり。オンタイムじゃなかったとしても、岩井俊二とか、高橋ヨーコさんとか、蒼井優と近しい人ばかりが続いたので、勝手ながら自分もその一味かのように読ませてもらいました。

そんな浮ついたところもありつつ、やはり出てくる人がビッグネームなので、さほど長い対談じゃない中でもキラリと光る言葉を残してらっしゃるんですよね、みなさん。「悩んだときこそ自分と向き合え」とか、「悩みから解放されることなんて死ぬまでない」とか、「不安やリスクはどこにいてもおんなじ」とか、「今まで思い通りになったことないのに、なぜ思い通りになると思うんだ」とかとか。仕事に、人生に、ぐっとくる言葉があります。それを引き出しているのは優さまの質問がいいというのもあるんだろうけど、きちんとした関係性を相手と築けているからだよな、と尊敬と、嫉妬を同時に思いました。多分僕が初対面で同じことを質問しても、同じ回答が出てこないことは確か。本当に業界のそうそうたる方々にものすごく愛されてるよなぁと改めて思う次第。

それにしても、キョンキョン&大竹しのぶという、蒼井優が歩むべき道の先にいるふたりとの対談が見られるって誰得なのこれ? 蒼井優は明らかにキョンキョンと出会ってからキャラ変わったと思うし(豪胆になりました)、大竹しのぶと蒼井優の演技は、本質的に通じてると僕は思っているし、とにかくこの対談は奇跡としか思えないわ。そしてかなり意外だったけど、水原希子ちゃんとも仲がいいとは! 希子ちゃんにとってのキョンキョンになったりするんじゃなかろうか!?

と、最近ちょっと蒼井優をご無沙汰だったけど、写真とあわせて堪能させていただきました。僕もひところ程ストーキングしてませんが、やっぱり当代きってのクレバーでパワフルな女優さんだと思います。
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by april_hoop | 2014-12-20 00:00 | 出版 | Trackback | Comments(0)
2014年 10月 23日
感想_切りとれ、あの祈る手を
c0160283_1292079.jpg難解だけど刺激的。佐々木中『切りとれ、あの祈る手を』読了。哲学者であり思想家である著者が、文学と言葉のチカラについて語りおろした全5夜を収録。2010年刊行。
切りとれ、あの祈る手を :佐々木 中|河出書房新社
atarusasaki.net / 切りとれ、あの祈る手を 書籍情報

後輩に薦められてお借りして読了。読むのにけっこう時間がかかりました。予備知識なしに読み始めたところ、かなりとっつきづらく、何が書いてあるのか最初は全然わからず。それでも読み進めるうちになんとなくそのテンションに慣れてきて、途中からは面白くなりはずみがついて後半は一気にフィニッシュ。一回通して読んだあとでもう一度最初から読むとだいぶクリアに読めた気がします。でもやっぱり一言でいって難解。著者の知識量と、明晰な頭脳に感嘆しつつ。

主題は、言葉とは革命である、ってこと。革命クラスのものすごいパワーを持っているものであるということ。それを変なアナログ思考とかではまったくなく、ルターの宗教改革、ムハンマドの預言者としての活動、それから中世解釈者革命という3つの歴史的事実を教材として語っている。つまり、歴史が証明しているってことをベースに、当たり前を当たり前に語る体で痛快にメタ的につづられてます。中世解釈者革命ってのはなんのことか知らなかったけど、一度は失われたローマ法大全を11〜12世紀にリライト、復活させて現代まで続く近代国家の基礎ができたことを指すそうな。ずばりテクストによる社会変革です。革命には常にテクストがほぼ全部の役割を担っていたんだと。

とにかく話のスケールが大きかったり、個人的だったりして、そのまま飲み込むにはかなり知識も必要だと思うけど、自分のレベルで理解するところ、本当の意味で「知る」ということと、「知ることで生まれる問い」というものからはのがれられないってことか。でもその「知る」は情報を受け取るとは次元が違う話で、どっちかというと誰かの魂に触れるようなことを意味しているのだと思う。それに触れてしまったが最後、自分も同じだけの魂を差し出さなくてはならなくなるという。自分でもなに言っているかよくわからないけど、多分そういうこと。そもそも言葉や文字になる前には、それぞれの文化の中にあったもの。それがテクストに置き換えられ本になることで、情報となり人々を規範するものとなった結果、テクストは革命のツールともなりえた、と。

そのまま理解しなくていいと思うというか、理解できないからこそ考えることが求められて、それこそがこの本の主題なのかも。テクストが革命だなんて考えたこともなかったけれど、それを説得力たっぷりに語っていてすごい。というのとは別に、普段自分の小さな視野の中だけで完結しそうなところを、あっさり飛び越えて俯瞰しているところにかなり惹かれました。つまりこの本自体がまた革命的、という構造。文学は本当に終わったというのか? 情報はそんなにエライのか? 2000年のスケールで見ると、現世の出来事なんて本当にナノ以下の世界だわ。

うまく頭が回らないけれど、かなり興味深かったのは確か。佐々木中先生、すごいひとだわ。
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by april_hoop | 2014-10-23 00:00 | 出版 | Trackback | Comments(0)
2014年 10月 17日
感想_木皿食堂
c0160283_12422693.jpgフツーって大事で、強い。木皿泉『木皿食堂』読了。脚本家ユニット木皿泉の新聞連載エッセイ、雑誌でのインタビュー、羽海野チカとの対談、それからシナリオ講座での講演を収めた一冊。
株式会社双葉社 |木皿食堂

昨日に続いて木皿さん本の積ん読を読了。こちらは自分語りも多かったから、より木皿さんの考えてることに迫っていたような気がするわ。やっぱり彼らはとてもピュアだということ。それを大人になっても持ち続けるって貴重なことで、しかも彼らはテレビの世界でそれを押し通せているからすごいんだよな。それはやっぱり誰にでもできることではないと思う。

もちろん彼らには才能があるんだと思う。彼らが見て感じて思うことを、シナリオという形に落とし込める。そしてそれがちゃんと伝わるように作れるという才能が。その才能の源泉がなんなのかって考えると、ものごとをまっすぐ見て、ごまかさないで対峙することなんだろうなって思います。間違ったことをやり過ごさない。疑問をそのままにしない。そして根本的に多分性善説。キレイなものをちゃんと大事にしたいって思ってらっしゃる。それを多くの人に伝えたいと思っている。だからプロデューサーも動くしファンもついてくる。

彼らは自分たちのことを「ヘンな作家」と評してるけど、全然ヘンじゃないと思う。ものすごくまっとうで普通。だけど、周りがそれをできないから、逆にヘンに見えちゃってるんだろうな。普通すぎるからヘンに見えるっていうおかしなねじれ。でも僕自身もそれを感じてて、おかしなことをおかしいっていうと、なぜかヘンな人になってたりするんだよね。ヘンだけど。と、勝手に共感していいのかどうかわからないけど、すごくそこに親近感を覚えるし、勇気付けられるのだよなぁと改めて思いました。

ホンの中身が全然わからないレビューですみません。木皿さんの頭の中が少しわかった気になれて、そしてこれまでの作品がもっと好きになれる1冊です。でもいろんなところに発表されたものをまとめたホンなので、これまでの全部チェックしてる人は読んだことある内容ばっかりなのかもしれません。

木皿作品がまた観たいな〜。やはり『すいか』か!?
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by april_hoop | 2014-10-17 00:00 | 出版 | Trackback | Comments(0)
2014年 09月 29日
続・感想_下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
c0160283_22564546.gif前のエントリの続きです。
『下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち』(内田樹):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部

ここで語られる「等価交換」の法則は、この本が出た10年前よりも今の方がはるかに強いチカラを持ってきているように感じます。むしろ、あらゆる行為がこの等価交換で語られるように思うのです。たとえばCDが売れなくなりました。背景はいろいろありますが、要するにアルバム1枚に3000円の価値を見出してないから。10曲あると好きな曲が3~4曲だったりするのはよくありますよね。だったら、iTunesで4曲分だけ買ったほうが得、ということです。1曲ならYouTubeで聞けばいい。

洋画を観る人も減りました。面白いかどうかわからないものに1800円も払うのは損だからです。でも『アナ雪』ならいい。これだけ人が入っているのだから面白いはず。よしんばつまらなくても、観たという話を共有できれば元が取れるから。これも、等価交換の法則なんじゃないかと思います。

ITが生活の隅々まで入り込み、ここにきてスマホが行き渡り、サービスはすごい勢いで進化していきます。より便利なもの、より安いものがどんどん押し寄せてくる。損したくないというのは普通の感情だろうけど、それを世の中全体でプッシュしてくる。そして受け取る情報は天文学的に増えていく今、そのすべてを処理することはもうできやしない。知らないことをいちいち調べるひまももうなくなってしまった。処理速度はあげなくてはいけないし、無意味なものにかかわってる時間なんてどこにもないじゃないか、と。

意味だけを追い求めるロジックが、日常生活のすべてにまで入り込んでしまった。そこに支配されてしまったことに危機感を覚えます。効率だけで生きていてはたしていいのか。その結果が、等価交換の要求を生み、リターンがないと動けない体を作ってしまった。ついにはリターンを放棄する代わりに自分にはなにも求めないでくれという、下流志向なる逆転現象までも生み出してしまった。意味や理由は、ずいぶん後になってからしかわからないものだってたくさんある。勉強の意味なんて目に見えるものじゃない。好き嫌いだけで判断できるものでもない。

もちろん、すべて自戒を込めて思うこと。自分だって楽したいし、意味ないことしたくないし、投資には確実にリターンを欲しいと思っている。だけど、役に立つかどうかがすべてじゃないし、自分が知りうる意味なんてものも限られた世界でしかないことも知っているつもりです。くだらないことは世の中にたくさんあるけど、それをみんながくだらねぇって放棄したら、大変なことになっちゃいますもんね。世界は多分、無意味なものばかりでできている。それがいいんじゃないか、って思いますけどね。

なんかよくわからない、自分を棚に上げた世の中への憂いみたいになっちゃいましたが。ゆとり世代に限らず思うことだし、上の世代から見たら自分もその一部に見えているかもしれないな。意味だけに縛られない豊かさのようなものを、改めて探していきたいと強く思ったのでした。

とにかく良書です。もう一度しっかり読み直したいと思います。

感想_下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
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by april_hoop | 2014-09-29 00:00 | 出版 | Trackback | Comments(0)