2014年 01月 31日
B&Bで見かけて買ってみたのは、写真家の市橋織江さん特集の『QUOTATION』。増刊号扱いみたいです。ちょうど今、箱根彫刻の森美術館で市橋さんの展示をやっていて、そのタイミングに合わせてリリースされていたみたい。これまでの仕事のまとめと振り返り、そして本人インタビューたっぷりと、彼女と一緒に仕事をしてきた主にADのみなさんからのコメントなどなど、市橋織江像に迫る一冊でした。 News - "QUOTATION" SPECIAL ISSUE 市橋織江の現在 発売中 | QUOTATION magazine.jp 市橋さんの写真は好きだったけど、ずーっと上手くその良さを言葉にできないんだよなーと思っていました。透明感、柔らかい、独特の色彩、などなどどれもありふれた表現になってしまって本質を捉え切れないなぁと。でもこの本を読んで彼女の写真の本質に、自分なりに腑に落ちたというか少し近づけたような気がします。それは職人気質とも言うべき徹底したプロ意識と、そこから生まれる「私」を打ち消す客観性なんだと思いました。彼女の写真はとても美しいのだけど、透明感とは何か違う、どこか良い意味で冷めているような気がしていたのは、そういうことなのかと。 インタビューがすべてではないとは思うけど、市橋さんが、自分を作家ではなく職業カメラマンだと言っていること。広告の世界でこれだけ愛されている理由。そういうのをあわせて考えていくと、自分のエゴだけで撮るのではなく、求められているものを差し出す行為に責任とプライドを持っているからなんだと思う。こういう写真が欲しいというリクエストに対して、NOを持たないこと。あるのは、いかにして最高の一枚を作り上げるかということだけ。だけど、決して自分らしさがないわけじゃないところが、これだけ支持されている理由なんだろうな。そういう職人気質という意味ではもしかして、写真好きな人からしたら物足りなさを感じることもあるかもしれない。でも、これはこれで誰にも真似できない領域なんだろうと思う。 あと、常にライブでドキュメンタリーを撮ってはいるけど、単なるスナップにはしないというこだわり。静止画として完成させる、切り取り方への意識の高さ。それが圧倒的にリアルなのに非現実性を漂わせる秘密なんだと知った。そういう、撮りっ放しではないディテールへの執着もまた、職人的だなぁと思わされたところ。そういう言葉やこだわりが、アートディレクターやCMディレクターたちに信頼される理由なんだろうな。 そして、おこがましいけど、自分もちょっと同タイプなのかもしれないと思った。あまり先のことを考えないところや、好き嫌いがはっきりしているところ、こだわりは強いけどそれはアーティスティックなものではなくて、職人的な要素から来ているところ。うん、やっぱりおこがましいですね。言葉にうまくならないけど、なんかすごく共感しちゃったのです。 ところで、フィルム派なことは知ったけど、どんどん縮小しているフィルム業界に危機感を覚えて、フィルム文化を残していくためにもその良さを発信していきたいと考えているそう。どちらかというとそういうものにもあまり執着しないのかと思っていたので少し意外だったけど、僕もいち写真ファンとしてフィルムは残っていってほしいと思うので、大いに賛同したいです。あー、箱根の展示観に行きたいけど、時間取れるだろうか。
by april_hoop
| 2014-01-31 00:00
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