2013年 10月 03日
自分の基準で選ぶこと。中川ちえ『まよいながら、ゆれながら』読了。福島の「あんざい果樹園」。おいしい果物を育て、多くのファンに愛されたこの場所が、震災によって大きく変わってしまう。息子たちは幼い子供のために移住をし、そして「たべるとくらしの研究所」を開くことに。あんざい果樹園では放射能によって汚染された果樹や畑を、徹底的に除染し、基準値を大きく下回るおいしい果物が実った。もとの日々はもう戻らない。だけど、振り返らずに進むこと。 mille books あんざい果樹園を訪ねてからもうすぐ1年。そのときのことも、震災のことも、少しずつ少しずつ薄まりゆくけど、ときどきこうして引き戻される。いや、立ち返らないといけない。だからこの本が出てくれて本当に嬉しい。著者の中川ちえさんは、蔵前でin-kyoという暮らしの道具のお店を開いているエッセイストさん。あんざい果樹園ともゆかり深い彼女が、震災前後の安齋家の様子を伝えながら、自身はなにを考えていたのか。今、なにを思っているのか。そのあたりの気持ちをとても真摯に丁寧に描いています。あのとき、自分がどんなだったか思い出させてくれるのは、「あまちゃん」とも同じかも。なにが起こっているのかわからなくて、無力さと、どうしたらいいのかわからなさに苛まれたあの感じ。 北三陸のみんなが立ち直っていくのはフィクションだったけど、あんざい果樹園も、たべるとくらしの研究所も、まごうことなき現実の今を生きている。それぞれの場所で。過去は取り戻せないけど、明日を信じて、未来に向かっている。もちろん僕らには計り知れない苦労があったことはわかったうえで、勝手ながらその姿に勇気づけられる。彼らから学ばなくてはならないし、僕たちは進まなくてはいけない。未来にちゃんと伝えて、正しい道筋を残して、よりよい方向と方法がなんなのかを考えないと。中川さんは、先の見えない中で、自分なりの基準をもち、その中で選択をするしかないということを書いていた。自分がなにを口にするのか。なにを身につけるのか。基準は人によって違っていい。ただ、もう誰かのせいにするのはやめないといけない。それを選んだのは自分だって言わないとね。 馬場わかなさんが撮影している写真がとても素敵で。自然の中で笑う安齋家の人たちは、被災者でありながらそんなことは感じさせない。子供たちはすでにすくすくと育っているようだ。りんごの収穫の時期だなー。福島に、行こうかな。札幌にも、また行きたいな。
by april_hoop
| 2013-10-03 00:00
| 出版
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ツナガール。1min.で読めるがルール。管理人エイプリル(1977年生まれ)の日々雑感エトセトラがどこかで誰かと何かをコネクトしてユナイトすることを願いつつ、であーる。 by april_hoop information
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