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2012年 12月 20日
感想_村上ラヂオ
感想_村上ラヂオ_c0160283_2261051.gif順序は逆になってしまったけれど、村上春樹のエッセイ集『村上ラヂオ』読了。発売されたのは2001年、連載してたのは2000年なのかな。9.11前の村上さんでございます。今読んでも全然古くさくない。確かなリズム、伸びやかな感性。ああ、やっぱり僕は村上春樹という小説家が大好きだ。
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今読んでも古くないというのは、村上さんはやっぱり本質的、普遍的に物事を捉えていることの証左だと思うんです。ネタ自体は幾分古くなってしまったものも含まれていたかもしれない。だけどそこにある視点や捉え方っていうのは、スプーン一杯分でさえ古ぼけていないんだよな。これはすごい。自慢じゃないけど僕の雑文blogなんて、1年前のでも恥ずかしくてみせられたもんじゃないよ(引っ込みつかないんで見せてますけど。でもインターネットなんで書き換えようと思えばいつでも書き換えられます。本はなかなかそうはいかない)。

だけど、2、3と読んでから1へと戻ってきて思うことは、このときはまだフォームが固まっていなかったな、ということ。小説家としてじゃなくて、この連載のエッセイストとして。昔は3にあるような、前フリからの本題というような構成はまだない。時々あるけどそれは意図したというよりは偶発性に任せていた結果のように見受けられる。やっぱりどんなに変わってないように見えても、確実に10年という月日は積み重なっていたわけで、1ミリの変化もないということはありませんよね、人間てそこが面白くてめんどくさいところ。

そして、ひとりの作家を追いかけることで出会える、その作家の人生だったり変化というのもまた興味深い。たとえ一冊の短編が愚にもつかない作品だったとしても、次の作品はぐっとよくなるかもしれないし、そしてさらにまた次の作品は非の打ち所のない一冊かもしれないし。そうでなくても変わらないということも変化の露出のひとつとも言えてしまうのかな? なんだかよくわからない話になってしまいましたね。とにかく文脈を探るような本の読み方も好みだったりします。村上さんでさえこのくらいの変化があるんだ。人は変わらずにいられないんだ。

ということで、楽しいエッセイでした。この筆力、やっぱりほしい!

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by april_hoop | 2012-12-20 00:00 | 出版


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