2011年 12月 13日
写真家はこれどう思うかな? 山崎ナオコーラ『ニキの屈辱』読了。加賀美は、若くして人気写真家となった村岡ニキのアシスタントに採用される。1歳年下ながら、高圧的な態度を取り「女の子」とされることを嫌うニキに気に入られようと、加賀美はそのすべてを受け入れる。少しずつ信頼を得て、ニキの極端な性格を知るうちにふたりの距離感は揺らぎ始めて…。 河出書房新社|ニキの屈辱 いつも通り流れるように読みやすく、おもしろかった。んだけど、なんか手放しで褒められない感じがしがちなナオコーラ氏の作品。でもこれまで読んだことのあるやつと比べて、同じ匂いがあるけど、少しなにかが違ったようにも思ったけどどうなんだろう。若い女性写真家とそのアシスタントというモチーフが、今までに読んだことのあるものと比較すると現実的な匂いがしたからかも。モデルか、モデルではないにしても誰かを想定して描いたりしたのかな?ってなんとなく思ったりもした。『人セク』とかは現実社会の話だけどもう少しファンタジーっぽさが強かったもんな。 現実的といいつつも、これでもか!のツンデレ女王ニキと、乙男マゾヒスティックアシスタントというキャラ設定は漫画ちっく。その明快な極端さと写真という比較的オレに身近なモチーフが興味をそそり、加賀美の自分はニキのことわかってますから!的な勘違いが滑稽で。ガーリーな趣味もなんだか気持ち悪そうだし。でも理解は誤解の総体的な話を、最後にそれを突きつけるのはなかなか味わい深い。結局のところニキが何を思い何を考えていたのかは誰にもわからない。し、想像もあんまりできない。エキセントリックなところがあるけれど、実際彼女は何を思っていたんだろうね。もしかしたら著者自身「女の子」という表現には抵抗あったかもな。若くして成功した"女の子"小説家。 最後の方はなんかあっという間に回収されてしまって、前フリの勢いに比べると尻すぼんだような印象も残る。加賀美がとんとん拍子にステップアップするのも納得いかないし、恋の終わり方も微妙っちゃ微妙だし。ただ、彼の写真家としての視点が育っていくくだりと、瞬間をとらえるイメージの描写はもう少したくさん見ていたかったような気もするなー。あれだろうな、いつもナオコーラ作品は寸止め感が強いというか、あんまり深く深く人物の中に潜っていかないのが特徴だろうか。なんとなくの事象と、そこから想像される余白の世界で、突き詰めて突き詰めて社会の実相をえぐりとる、みたいなところが(おそらく意図的に)少ないんだと思う。そこが時折物足りなさにもなったりする。読者を強引に引きずり込むような長編もたまには読みたいような気もするというか、どんな世界を隠し持っているのか気になるんだが。 とかなんとか思い返してみると意外とつかみ所のない本だな。。終盤のトイレのくだりとか、いらない気もするし、「カノッサの屈辱」を持ち出すのもちょっぴりヘンな感じ。片思いの逆転現象とか、格差が揺らす恋心という普遍の吊り橋効果的恋愛要素を結局は描きたかっただけってことなのかもしれないね。ほんとサクっと読めちゃって電車読書にぴったりな感じです。 あ、カバー写真は川島小鳥さんが撮ってますよ! このあたり内容とのリンクが見てとれますナ。
by april_hoop
| 2011-12-13 00:00
| 出版
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ツナガール。1min.で読めるがルール。管理人エイプリル(1977年生まれ)の日々雑感エトセトラがどこかで誰かと何かをコネクトしてユナイトすることを願いつつ、であーる。 by april_hoop information
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