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2009年 09月 29日
感想_新参者
感想_新参者_c0160283_072022.jpg待ってたぜ〜スマッシュヒット! 東野圭吾『新参者』読了。小伝馬町で40代の女性が殺された。彼女は半年前に離婚し、2ヶ月前に小伝馬町へと越してきたばかり。本庁の刑事とともに捜査に当たるのは、ごく最近日本橋署にやってきた、加賀恭一郎。彼は、初めてやってきた日本橋という人情の色濃く残る町をつぶさに調べながら、事件との関連性が薄い小さなできごとまで明らかにし、そして真実を突き止めようとする。
講談社BOOK倶楽部:新参者

すばらしい作品だね! 9つの章からなる連作短編集だけど、なるほどこういう攻め手できましたか。すなわちそれは群像スタイルのミステリー。加賀を狂言回しにすえ彼の主観を差し挟むことなく、殺人事件の犯人探しだけではないドラマをあぶり出す。数多くの人々を取り調べるそのひとつひとつに物語を生み出し、それらに最終的に像を結ばせる手腕は本当に素晴らしいよ! あっという間にのめりこみ、ひとつひとつは実に読みやすく、だけど意外性もちゃんとあって充実の読書タイムを約束します。群像スタイルでいえば『理由』あたりも思い浮かぶけど、今作が中心にすえているのはなんたって町に流れる人情。そして家族の絆であり、すなわちそれは人と人のつながり。

親の世代がいて、子の世代がいて、下町と言えど受け継がれるものは時代の波の中でどうしても薄くなりがち。だけどそれらは、決して先細りで消えていってしまうだけのものじゃないということ。加賀は断言する。「大丈夫、いいものは残りますよ」。これは古い時計について言った言葉だけど、モノはもとより絆や人間関係について言ってるように思うね。そしてラストの大オチからは、世代間のギャップとかそういうのは時代のせいだけじゃなく、親世代のあり方にも一因があるということを改めて問うてるように思えます。

殺人事件としては難解な種類ではないんでしょう。でも事件解決とは別の次元で、都合がいいだけの美談でも、奇をてらうばかりのミステリーでもなく、メッセージ性に富んだヒューマンドラマに仕立てたのは東野先生ならでは!

きちんと作ればそれはそれは素晴らしい映像作品になりそう。いやー大満足の一冊でした。ハードカバーでよければ貸し出しますよ〜。

by april_hoop | 2009-09-29 00:00 | 出版


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