2005年 11月 15日
浅田次郎『地下鉄[メトロ]に乗って』読了。戦後の混乱に乗じて成り上がり、大企業の社長となった父親に反目して若き日に家を出た男の物語。父親との溝が決定的になったのは兄の自殺だった。 同窓会の夜、地下鉄の駅構内で迷い込んだ先は、兄が死んだ日。現在と過去を行き来し、今とは違う若き日の父親の姿を見るうちに、知るよしもなかった真実が明らかになる。その運命は、愛人みち子も巻き込み事態は意外な方向に。 全編にわたって地下鉄を組み込んだファンタジー。メトロを媒介にしたタイムトラベルで、冒険ロマンものかと思いきやそうじゃなく(ある種のロマンはあるけど)、痛みと葛藤がたゆたう物語。というかラストは哀し。。時空越えもんによくある過去をいじって今を変えるってんではなく。知らなかった過去、見たことのない父親の姿を前にした主人公の心が揺れ動く様を通して、親子、家族、男女の繋がりと生き様が掘り下げられる、みたいな。で、最後の最後ショッキングな結末。途中から、まさかまさかと思いながら読み進め、やっぱりそうなってしまうのかぁ……的な後味。あまりに切ないぜ、みっちゃん! 地下鉄がいい素材だなーと。文字通りアングラな感じと、特有のウェットさと硬質さ、乗せてきた人と時代とその変遷、そして乗客それぞれにとってのメトロ。そーゆーのを映してて。浅田次郎らしい骨太な空気感にもよく似合う。すげー感動したー!っていう話でもなかったけど、ジュワっとノメりました。描き込みすぎず、あっさりし過ぎずのさじ加減がグッド。一気に読めた。 ちょっと誉めすぎた気もするけど、秀作でした。とにかく映画がどうなるか気になるなー。楽しみだわ。
by april_hoop
| 2005-11-15 00:00
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