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2006年 10月 08日
感想_天空の蜂
感想_天空の蜂_c0160283_08993.jpgある意味で『ダ・ヴィンチ・コード』を越えてる超傑作! 東野圭吾『天空の蜂』読了。

午前8時、防衛庁に納められるはずのヘリコプター「ビッグB」が何者かによって仕掛けられた自動操縦により盗まれた。ヘリの向かった先は原子力発電所「新陽」。犯行声明とともに出された要求は、全国の原発を破壊しなければ、このヘリを「新陽」の上に墜落させるというもの。しかしヘリには誤って乗り込んだ子供がいたのだった。子供を救い、ヘリを奪還したい政府。要求を通す犯人。わずか10時間の事件を徹底的にクールに綴った珠玉のクライシスサスペンス。あらゆる意味で圧倒的!

信じられないくらい面白かったわ。ヘリ、原発に関する専門用語がうなるほど出てきて、当然まるで理解できないのは『ダ・ヴィンチ・コード』でいうキリスト教用語や象徴学用語と同様。それを読み進める楽しさも同種。でも本作が違うのは、ただの謎解きアクション物語で終わらせるんじゃなく、犯人の動機に読者への痛烈なメッセージがあるということ。この意味でこの作品は圧倒してるのですわ。

キーワードは「沈黙の群衆」。最終盤までそのメッセージは出てこないけど、そこに至るまでにたっぷりとその布石を落とし込んでるからクライマックスで一気に化学反応を起こして爆発する感じ。さながら原発のように。でありながら決して単なる原発批判ではない(ここに著者らしさを感じる。現状、原発なしで我々の暮しは成り立たない)。それ以外にも群像ドラマ性や、私刑といった要素も含まれてて、どこ切っても楽しめます。ボリュームもけっこうなもんだけど、それを一気に読ませる力、ありあり。

もう一回読み直したい大傑作でした!

by april_hoop | 2006-10-08 00:00 | 出版


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