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2008年 04月 09日
感想_天国はまだ遠く
感想_天国はまだ遠く_c0160283_23592928.jpg爽やか再生話だわ。瀬尾まいこ『天国はまだ遠く』読了。ある決意を胸に、自分のことを知る人が誰もいない"北のほう"へと向かった千鶴。仕事も人間関係も完全に行き詰まった千鶴は、みずからその人生を閉じようと考えていた。たどりついたさびれた山間の民宿「たむら」で、いよいよ睡眠薬を手にする。
瀬尾まいこ『天国はまだ遠く』

すごく読みやすくて、地に足がついていて、スーッと入ってくる気持ちのいい再生ストーリー。本当に本当に限界だった千鶴にも説得力があって、安易に"頑張れ"なんていえそうにない状態からはじまるから、素直に千鶴を見守れる。もっとうまくやれたんじゃないの?なんてことは決して思わなかったね。そして、本当にゼロからもう一度自分と向き合う過程に無理がないので、読者が自分と重ね合わせることにも抵抗がないんだと思う。

豊かな自然と、美味しい食事と、シンプルな暮らしと、先のことを考えなくていいラクさ。その中で自分なりの答えに辿り着いた千鶴は立派だと思うし、先のことを考えなくていいというのは、先になにも楽しみがないということと同じなのかもしれないという主張にも素直に頷ける。結局のところ最後には"がんばろう"なんだけど、余分なものがクリアになったからこそその言葉がストンと届くんだね。丁寧な筆致で、女性作家らしい細やかさを感じます。

田村さんは、最後まで千鶴の名を呼ばず、そもそも尋ねもしない。名前という記号ではなく、千鶴の本質を素直に受け止めそして送り出し、まさしく自然そのもののように自然体な姿が、この話を支えてたんだなーと思いました。まあ、めちゃくちゃ心に残るような本でもないけれど、今なにかが上手く行っていない人には響く内容だと思うし、千鶴がどんな未来を過ごしているのか、ちょっと楽しみになるような読後感でった。よい本だと思います。

感想_天国はまだ遠く(映画)

by april_hoop | 2008-04-09 00:00 | 出版


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