人気ブログランキング | 話題のタグを見る
2008年 07月 14日
感想_ぽろぽろドール
感想_ぽろぽろドール_c0160283_0391743.gif
暗いよー暗いよー。豊島ミホ『ぽろぽろドール』読了。さまざまな人形と、その持ち主たちの一種不思議、ある種異様な模様をならべた短編集です。

人形って不思議ですね。もの言わぬただの物体のはずなのに、人間と同じ形を模したばかりにこんなさまざまなドラマを生み出すなんて。そこには涙もあり命もあり運命もあるというなんとも皮肉というか、非業というか。

てことで作者が繰り出してくるのはどれもどこか病的な香りのするお話ばかり。暗いんですよ、いちいち。とても技術は感じるというか、文章自体は巧いと思う。若いのに。けどどれもが粘着質でね。ページは進むんだけど、どこか気乗りはしないというか。今日はここまでにしておこうと、後ろ髪ひかれることなく思えてしまう感じ。

せっかくのお人形ですから、もっとファンタジーやドリーミーなネタもあって良かったのではと思ったりもするけど、きっとこの物語たちには(というより人形たちに)、人間の愚かしさみたいなものを投影したかったのでしょう。やり場のない感情が、人間の周りにはこれだけ渦巻いていて、この主人公たちはそのはけ口を人形に求めたというだけのこと。異様に見える彼らと同じような感情を私たちも抱えているのです。

そう思うといっそう暗い気分になりそうな、装丁の美しさとは裏腹な一冊でした。なんとなしつかみどころないな、豊島みぽりん。もう一冊読んでみっか。

by april_hoop | 2008-07-14 00:00 | 出版


<< 感想_ニート      感想_黒笑小説 >>