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2009年 02月 10日
感想_ベンジャミン・バトン 数奇な人生
感想_ベンジャミン・バトン 数奇な人生_c0160283_20342974.jpg「虚」を感じました。スコット・フィッツジェラルド『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(永山篤一訳)読了。老人として生まれ、年を取るごとに若返るベンジャミン・バトンの不思議な人生を描いた表題作ほか、フィッツジェラルドの未訳作品を集めた短編集。
ベンジャミン・バトン:文庫:フィッツジェラルド|角川書店・角川グループ

映画に死ぬほど見せられて、原作を探したところ、未訳だったため原文を読みあさってたところ、角川から短編集が緊急リリース。早速買わせていただきました。なるほどね?、原作は本当に奇妙な運命に生まれた男をサラっと追っていくタイプ。ボリュームもかなり短い。そこにあるのは悲哀が強くって、豊かさとかそういうものとはほど遠い感じ。最初から何かが損なわれているベンジャミンから、人生の虚しさみたいなのがこぼれおちてくる感じ。

そう、虚しさを感じるんだよね、フィッツジェラルドって。といっても『ギャツビー』しか読んでないから、全然語れないのですが、この2作を読んで強く感じたことを一文字であらわすならば、「虚」。それは、死が待っているという虚しさもあれば、若さが失われていく虚しさもあり、人間のつく嘘や、虚構、虚々実々といったところまでひっくるめた虚しさ。とか儚さとか。

そういうのって気持ちのいいもんじゃないんだけど、なんとなく共鳴しちゃうのは多分自分の中にもそれを感じている部分があるから。村上春樹なんかは特に死を意識した作風だと思うんだけど、フィッツジェラルドの中にもそのムードを感じるし、そしてそれはオレん中にも強く根付いている部分なんだよねー。だからつい気になってしまう。引き寄せられてしまう。

ということで、表題作以外も、そういう感じのあるダウナー系列の短編集。まあとにかくベンジャミンの原作が読みたかったので、それだけで大満足です。

感想_ベンジャミン・バトン 数奇な人生(映画)

by april_hoop | 2009-02-10 00:00 | 出版


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