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2009年 06月 07日
感想_ねじまき鳥クロニクル 第3部 鳥刺し男編
感想_ねじまき鳥クロニクル 第3部 鳥刺し男編_c0160283_234858100.jpg『ねじまき鳥クロニクル 第3部 鳥刺し男編』再読了。謎の女がクミコと気付いた僕は、幽霊屋敷と呼ばれる家を買い、そこである仕事をしていた。綿谷ノボルはそれを止めさせるために牛河という男をつかわせてきた。やがて僕は、あの井戸の中である部屋にたどりつく。

僕はずっと、この本は個人と全体の対比の話なのかなって思い込んで読んでいたけれど、全然そんなことはなく、ごくごく個人的な話だったわ。人の中にはどうにも理解しがたいなにかがあって、それはふとしたときに顔を出す。それに気付いたとき、誰もがそれに気付く前とは別の人間になってしまうんだね。それは悪意かもしれないし、強欲さかもしれないし、暴力性、野蛮さ、卑猥さ、予言、無音、その他いろいろ。世の中には、なぜそんなことをするんだろう?と到底理解できないkとがたくさんあるけれど、大なり小なりそれは誰にでもあてはまる「なにか」なのでしょう。

でも、たとえ隣に長く座っていても、一緒に暮らしていても他人のそれを完全に理解することは難しい。だって自分自身でもそれをどう扱うべきなのかわからないのだから。口に出して説明なんてとてもできやしないしね。言われてみれば自分の中にも、こんな象徴的なものではないけれど不確かなものってたくさんあるのかもしれない。いや、絶対的にあるんだろう。

で、クロニクルなわけ。そう、ここにある物語はずーっと繰り返されて来たことなんだ。いつ始まったか(そしていつ終わるのか)わからない時間の流れと寄り添うように。時間の流れるところには、運命や宿命などと呼ばれるような大きな抗いようのない流れが常につきまとっているのもまた、昔からずっと同じ。それは台風のように暴力的にやってきて、あっというまになにもかもを捩じ曲げて奪い去っていってしまう。覚醒することもあれば、損なわれてしまうこと大いにありえる。それをただ全面的に受け入れるのみなのか、自分の手で選び取っていると思うのかは視点の持ち方しだいなのかなー。ねじを巻く鳥は、時間を進める鳥であり、捩じ曲げる鳥でもあるのかもね。この鳥を観た人は、ちょっとだけ大きな時間の流れが見えるようになる。岡田亨しかり、シナモンしかり。

さて、『ノルウェイの森』との共通点も随分見受けられたけれど、これはどう解釈すべきなんでしょうかね。井戸の存在、月の下で脱ぐ女、損なわれてしまう恋人。村上春樹の中の半永久的なテーマなのかしらね。なんにしても、初読んときよりもはるかに楽しく読めたわ。ディテールはともかく、自分でも意外なほどいろいろ憶えていたことには驚いたけど。またひとクロニクルくらいの時間が経ったら開いてみよっと。

しっかし『1Q84』は驚異的な売れ方してるみたいね。日本人は本当に行列に並ぶのが好きだなー。ワイドショーで、上下巻あること知らずに下巻だけ買ってる人を見たときには呆然としましたが。結局、僕はまだ買ってません。ほとぼりが冷めたところでありがたく拝読したいと思います。

#第1部 #第2部

by april_hoop | 2009-06-07 00:00 | 出版


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