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2009年 06月 21日
世界報道写真展2009_一瞬こその永遠
世界報道写真展2009_一瞬こその永遠_c0160283_205022.jpgものすごい瞬間ばかりだ。『世界報道写真展2009』@東京都写真美術館。昨年1年間に撮影された世界124カ国、のべ96268点の報道写真の中から選りすぐりの入賞作品約200点を一挙に掲載。その全部は「地球で起きた」ことたち。身震いするほどの戦慄をお約束です、これ。8/9まで。
東京都写真美術館>世界報道写真展2009

「すべて地球で起きている」のコピーが示す通り、1枚の写真から放たれるのは圧倒的なリアリティ。紛争や社会問題、オバマ大統領、エンターテインメント、北京オリンピックまで2008年の様々な被写体の一瞬が切り取られている。さすがは報道写真で、そこからいろんな世相が見えてくるのがなんとも興味深い。日々流れるニュースを見てればわかる通り悲劇の方が圧倒的に多い。それは間違いなく現実なので、逃げ場のなさみたいなものも突きつけられる。日本はなんて平和なんだろう、っていうお決まりのものから、自分は世界のなにひとつも知らないんだな、という無力感まで、わき上がる感情もさまざま。

写真というメディアの力って、本当にすごい。1瞬だからこそ焼き付く永遠ってあるんだな、ってはっきりと気付かされた。たとえば同じ紛争を伝えるものだとしても、これがムービーだったら連続する瞬間たちの中で1瞬というのは埋もれてしまう。銃声も、滴る血も、目に浮かぶ涙も、苦悶の表情も、おそらく膨大な時間の波に飲まれてしまう。写真は違う。そのたった0コンマ何秒かの瞬間だけが抜き出される。それは、たったそれだけで雄弁に語りかけてくる。作り物ではないからこそ持つ力と合わさって、ものすごい迫力となって訴えかけてくる。

そして、すべては繋がっているんだな、って思う。人と人が争う理由は貧困だったり宗教だったりたくさんあって、傷つく人と傷つける人が出て、そこから逃れるために移民問題が発生し、またそれは紛争の種となり、暴動と鎮圧が起き、そんな悪循環が延々繰り返されてしまう。でも、この写真たちを見るとこんなことはあっちゃいけないんだ、とも思わせてくれる。それもまた報道写真の威力。カメラマンたちは、術を持たないうちらに教えてくれる。こんなことが起きている。こんなことは止めさせなくてはいけない。

同じだけ、美しい世界も見せてくれる。絶滅の危機にあるユキヒョウ、飛び込みの選手のボディ、ウサイン・ボルトのフィニッシュなど、それもまた人間が作り出した奇跡の瞬間。どれもこれもが一度観たら忘れられないほどの一瞬ばかり。写真としての素晴らしさはもちろんのこと、そこにあるストーリーに打ちのめされます。

いやー、これは観てよかった。来年も是が非でも観に行くことにしよう。

世界報道写真展2009
世界報道写真展2010
世界報道写真展2011
世界報道写真展2012
世界報道写真展2013

by april_hoop | 2009-06-21 00:00 | 文化


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